泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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野暮天なぞなぞ考

なぞなぞは、正解がひとつでなければ面白くない。

ところがどうだろう。多くのなぞなぞには、実のところ正解が複数存在する。これは由々しき問題である。たとえばこんなメジャーな設問。

「パンはパンでも食べられないパンはな〜んだ?」

正解はもちろん、「フライパン」である。そういうことになっている。だが本当のところ、正解は他にもたくさんある。「道に落ちているパン」「カビの生えたパン」「短パン」「パンタロン」「パンパース」「パンチ」「パンチパーマ」「パンくん(志村どうぶつ園)」「ゴパン」「サイパン」「鉄板」……etc。

「道に落ちているパン」や「カビの生えたパン」は、「人によっては食べられる人もいる」から、個人の価値観という不確定要素を含んでいるぶん、正解としては少し弱いかもしれない。だが「短パン」は簡潔で響きの良い点が評価できるし、「鉄板」は正解とされている「フライパン」と同素材であることから、もっとも既存の正解に近いといえる。

あと言うまでもないが、小麦アレルギーの人にとっては、すべてのパンが食べられないパンに値する。そういう人にとっては、「パン」も正解になる。

こういうのを野暮という。それをわざわざする人を野暮天という。ただいまご紹介にあずかりました。

では正解をひとつに絞るにはどうしたらいいのか? 

正解が複数出てしまう場合、確実に問題文に問題がある。絞り込みが足りないのである。問題文に言葉をプラスすることで、設定した唯一の正解意外をいちいち除外してゆく必要がある。

たとえば「パン」という答えを除外するには、設問の末尾に以下のようなフレーズを加えれば良い。

「パンはパンでも食べられないパンはな〜んだ?(小麦アレルギーの人は除く)」

この要領で問題文を練り上げていくと、以下のようになる。

「衛生上の問題を考えに入れず、動物や衣服も含まず、髪型名・攻撃方法・地名、板状の物体も除外した場合、パンはパンでも食べられないパンはな〜んだ?(小麦アレルギーの人は除く)」

野暮としか言いようがない。問題文の途中で眠る子供たちの寝顔が浮かぶ。鼻ちょうちんすら期待できる。

だがもっとシンプルな方法がある。それは、「パンに米を足せば良い」。

「パン」なのに「米」とはこれいかに? まるでなぞなぞのような言い草だが、足してみればすぐに効果が実感できるはずだ。

「パンはパンでも食べられないパンはな〜んだ?(※正解には個人差があります)」

これで何を答えようと、その人にとって唯一の正解となる。

野暮の極みである。

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