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短篇小説「よろずサポートセンター」

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 私は何か困ったことがあると、必ず「よろずサポートセンター」に相談することにしている。みんなもそうするといい。電話に出た「よろずサポーター」が、なんでも解決してくれる。本当に最高のサービスがここにある。その手段さえ問わなければ。

 仕事から帰ってきて部屋の電球が切れていることに気づいたときも、私は即座に「よろずサポートセンター」に電話をかけた。すると電話に出たよろずサポーターの指示により、三十分もしないうちに一流テレビ局の照明スタッフ数名が駆けつけ、様々な角度から、夜が明けるまで私を激しく照らし続けてくれた。

 おかげで私は一睡もできなかったが、初めて俳優のような気分を味わうことができた。替えの電球など、翌日の仕事終わりにでも買って帰れば良い。

 夜中にちょっと小腹がすいた際にも、私は「よろずサポートセンター」に電話をかける。するとやはり三十分後には、かなり形が崩れてはいるが、おいしそうなクリームパイが我が家に届けられる。

 その一週間後に、私はテレビのバラエティ番組のドッキリ企画で、そっくりなクリームパイが中堅リアクション芸人の顔面に襲いかかるのを観た。その画面下には、「※スタッフ全員でおいしくいただきました」というテロップがご丁寧にも表示されていたのだが、特に気にするほどのことでもないだろう。私はテレビ番組のスタッフに入った憶えはない。

 私が交通事故に遭って入院したときに、「よろずサポートセンター」がしてくれたことは筆舌に尽くしがたい。歩行中の私を轢いた車の運転手は、いっこうに罪を認めぬうえ、借金まみれで賠償金の支払い能力も一切ないと弁護士から言われていた。しかし私が一ヶ月の入院生活を終えて退院する際には、すべての治療費が「よろずサポートセンター」名義ですっかり支払われていたのだった。

 その三日後には、私を轢いた男が謎の死を遂げたとの噂を耳にしたが、何かあったのだろうか。

 そしていま、私は冬の雪山で遭難しているが、やはり「よろずサポートセンター」には大いに助けられている。猛吹雪により視界の閉ざされた雪山の中、私は「よろずサポーター」による電話越しの指示に従って歩くことで、無事に山小屋を発見することができた。

 そして山小屋の上空には、「よろずサポートセンター」が用意したヘリが日に数回やってきては、水や食料品や毛布を定期的に投下してくれる。さらに毎日きっかり十五時には、三時のおやつまで降ってくるのだから有難い。まさに至れり尽くせりである。

 おかげで私は真冬の山小屋で、すでに三日間に渡り生き延びることができている。外の雪はますます強くなるばかりで、いっこうに止む気配がない。よろずサポートセンターが毎食時によこすヘリは、常に一定の高度を保ち、それ以上降下する様子はない。もちろん、そこから縄梯子が降りてくるなんてこともない。

 本当のサポートとは何か。私はこの段になって、遅ればせながらそんなことを考えはじめている。もしかすると、私にはもっと他に、連絡すべきセンター的な組織があるのかもしれない。

 だが何しろあちらは「よろずサポートセンター」と言っているのだから、それ以上よろずに渡って私をサポートしてくれる組織など、どこにもあるはずがないと私は思う。

 まもなくこの小屋は、跡形もなく真っ白な雪に埋め尽くされるだろう。


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Sound of Madness

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