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【当ブログへの入口】ウェルカム短篇小説おすすめ5選【もしかするとそのまま出口】

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久しぶりに長編小説を書こうと思っていて、何かネタになるものはないかという浅ましい思いで、当ブログに書いた自作短篇小説を珍しく読み返してみたりしている。

本来自分が書いたものを読み直すのは好きじゃないのだが、改めて読んでみるとまったく身に覚えのないフレーズや展開が随所に出てきて興味深い。

なので今日は、このブログを最近訪れるようになってくれた読者の方々への入門編として、また以前から訪れてはいるもののそんなにちゃんと読んでいない方々へ向けて(いやブログとは、だいたいそのようなものだと思ってます)、これまでに書いた短篇小説の中から、なんとなく思い浮かんだおすすめの5作を、今回の読み直しで印象に残った身に憶えのないフレーズとともにご紹介していきたい。


1. 短篇小説「ラジカセの木」

そもそも、なぜ「ラジカセ」を「木」として育てる小説を書こうと思ったのか、その動機が我ながら不明。

途中で、《良き枝を選び黒人の肩に軽く担いでもらうと、ラジカセはすこぶる丈夫に育つ》とか言い出しているのも謎だが、再読して特に驚いたのは突如スケール感を醸し出すラスト二文。この余韻しかない終わらせ方は気に入っているが、とても自分の脳内から出てきたとは思えない。

本当はそちらを引用したいところだがいちおうオチなので、ここではサンドウィッチマン富澤に「ちょっと何言ってんのかわかんないですけど」と言われそうな冒頭の一文を。

男は庭の畑でラジカセの苗を育てていた。

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2. 短篇小説「条件神」

願いを叶えるのに、何かと細かな条件をつけてくる神。無茶ぶり気味の条件に悩まされた挙げ句、主人公の脳内で繰り返される謎のフレーズ。

なぜこんなことを書いたのかわからないし、改めて読むとちょっと怖い。

「もしも髭スピーカーという商品が開発されたら、はたしてそれはよく売れるだろうか?」
「もしも髭スピーカーという商品が開発されたら、はたしてそれはよく売れるだろうか?」
「もしも髭スピーカーという商品が開発されたら、はたしてそれは……」

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3. 無理比喩短篇小説「因果オーライ」

とにかく無理のある不自然な比喩を詰め込めるだけ詰め込んでやろうという不純な動機でのみ書かれた短篇。遠めの比喩を力づくでたぐり寄せる、という暴投覚悟の大振りな書き出し。

比喩のうるささがこの設定の真骨頂。

 朝の通勤電車はコンビーフの缶詰のように混んでいた。中段をぐるぐる巻き取るあの独自の構造は切腹を思わせるが、満員電車に乗っているサラリーマンたちの会社への忠誠心も実質的な切腹を前提としている。

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4. 短篇小説「挟まれたい男」

とにかく何にでも挟まれたい男は、やがて挟まれているものに感情移入して挟まれることを楽しみはじめる。その時点で何やってんだか、という感じだが、挙げ句手に持ったパンとパンの間にハムを挟み込んだ際に、すっかり挟まれたハム目線になった男の心の叫びがこれ。

万が一共感できたら、あなたも伯爵クラス。

大変だ! これでは俺ことハムとしては、挟み込まれているという感覚が全然足りないじゃあないか!

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5. 短篇小説「戸袋ひろしの誘惑」

またしても「挟まれ系」の設定である。もしかすると自分には何かそれ系のトラウマでもあるのだろうか、と勘繰りたくもなるが思い当たる節はない。

今回読み返していて、もっとも「何言ってんだコイツ?」と純粋に感じたフレーズ。最後の一節で急に上手いこと言おうとしているのがとても嘘くさくて気に入っているが、例によって自分で書いたという実感はまるで皆無。

あまりにも戸袋に引き込まれるものだから、「戸袋ひろしは戸袋に“挟まれている”のではなく、戸袋の中に“入ろうとしている”のでは?」という説もちらほら囁かれはじめているが、真相は戸袋の中である

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耳毛に憧れたって駄目―悪戯短篇小説集 (虚実空転文庫)

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