泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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プエルトリコで増える亀

WBC準決勝プエルトリコ戦、敗戦はもちろん残念だがそれ以下に気になることがあった。もちろん残念な気持ちのほうが圧倒的に上だから「それ以上」ではない。

多くの日本人は「プエルトリコ」という国名のイントネーションを、「ふえるわかめ」の調子で認識しているはずだ。まずこの感覚を認めてもらわないと話が前に進まない。なのでそういうことにいまここで決定する。「プエルトリコ」とは「ふえるわかめ」であると。

ところが、である。プエルトリコの選手たちがかぶっている帽子を見ると、そこには「PR」と書いてあるではないか。いやそんなはずはない。「PR」といえば「PROMOTION」の略である。皆さん広告代理店の方々なのだろうか。あるいは石原プロモーションの所属俳優なのか。CMを作ったりイベントを仕切ったりブラインドをめくったり炊き出ししたりする傍ら、野球をたしなんでいらっしゃるんだろうか。だとしたら強すぎる。こちとら四六時中野球ばかりやってる人を集めているというのに。

そう思って念のためユニフォームの胸に刻まれたロゴを見ると、そこにはなんと「PUERTO RICO」と書いてあるではないか。いや正確に描写すれば一行目が「PUERTO」で、わざわざ行を変えて「RICO」と来る。とりあえず広告マンでも舘ひろしでもないようで良かったが、しかしこれは大変なことになった。

さて何が大変なのか? これでは、「プエルトリコ」が「ふえるわかめ」ではなくなってしまうのである。そう、「プエルトリコ」の発音は、「プエル・トリコ」ではなく、どちらかといえば「プエルト・リコ」だったのである。「ふえるわかめ」は意味的にも発音的にも、区切るとすれば間違いなく「ふえる・わかめ」であって、「ふえるわ・かめ」ではない。それでは夜店で買った亀が思いがけず繁殖してしまったことに驚いた飼い主の女性が発する台詞になってしまう。「増えるわ〜、亀」。増えたうえに万年も生きられたらどうしよう。

我々はいつだって、ふえるわかめを湯水に投入した際の増殖量を、ついつい少なめに見積もってしまう。「増える増えるとは聞いてたけど、まさかこんなに増えるなんて!」

そこには用心しても用心しきれない、明らかな油断がある。プエルトリコ代表とは、つまりそんなチームだった。

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