泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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詩「湯切りのわたし」

カップ焼きそばには湯を多めに入れてもいいんだぜ
カップ拉麺と違ってたっぷりめに入れてもいいんだぜ

味薄くならないから
湯は捨てられる運命にあるから

You Must Die!
湯増すとDie!

でもこぼれない範囲ならいいんだぜ
もうこぼれたらこぼれたでいいんだぜ

面倒だけど味に支障はないから
熱いけど火傷と味は関係ないから

拉麺だと基準線より気持ち下めを狙う俺だけど
スープの袋から完全にスープの素を絞り出し切れていないぶん
ちょっと濃いめに作るのがちょうどいいとか思ってる俺だけど

捨てる湯ならいくら入れたっていい
捨てる湯なら雑に抱かれたっていい

だけど湯の立場になって考えてみろよ
捨てるなら最初から入れんなよ
捨てるならせめて少なめに入れとけよ
そんな声なき声が水面下から
ふやけきったそばをシンクにぶちまけるのさ

ボコッていうシンクのリアクション
ベコッていう辛苦の偽悪症

湯をラスト一滴まで捨て尽くそうとしたせいで
本体を腕がねじ切れるまで傾けすぎたせいで

すべては味を濃くするための努力
迫りくる薄味への過剰防衛

努力ですべてが台なしに
余計な工夫で腹ぺこに

そもそも焼けてない茹でそばのくせに
そばというよりはどう見ても麺のくせに

どこからでも切れますなんてマジカルな言葉は水に流して
麺の油で指がベタついてどこからも切れなくなって
凶暴な鋏をその手に
さあ添付された青のりを番茶で流し込め!
番茶は番茶で熱いから気をつけて!
付属のソースは何かに使えるかもと思って

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