泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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Captain of the 湿布

「介の字貼り」とか言う前に、明かしてほしいことがある。

ちなみに「介の字貼り」は、左の肩胛骨サイドに貼る一枚の裾を、ややレフトに流すように貼るとそれっぽくなる。ただ漢字に近づくというだけの無駄に真面目な所業。

ところで久光の話をする前に、大石の話をする。肩こりが酷いので、湿布を貼っている。

いま貼っている湿布は、大石膏盛堂の「温感アスコラルL」。問題はもちろんその効き目ではなく、ネーミングセンスに限られる。こういう物の効き目は、いつも良くわからない。

さて「温感アスコラルL」。まるでチープな光線系必殺技のような名称だが、そこには「明日はこらない」という希望的メッセージが込められているはず。だが最後の「L」はラージサイズの「L」だとして(たしかに一枚一枚はデカい)、「ル」の「上手いことまとめあげてやった」感がどうにも鼻について仕方ない。原型であるところの「アスコラズ」から逃げた結果としての。

しかし「アスコラズ」だと駄目なのも良くわかる。そのまんますぎるとプロっぽくないから。なんとなく「トローチ」くらいがこの業界のいい按配とされているような気がする。そのあたりは多分業界によっても基準が異なり、スナック業界(菓子ではなく飲み屋のほう)などはもっとあらゆる意味でインフレな感じがする。

「温感アスコラルL」は、「アスコラル」の部分の具合もあるが、そもそも「漢字+カタカナ+アルファベット」という言語のハイブリッドな組み合わせが、どうにも過剰すぎる印象を与える。そのイキり感がB級感につながって、発音を繰り返すうちに逆に言いたくなってきていたりもするのだが、まあそれ以前に主要ユーザー層でもあるグランパグランマが覚えられぬというのっぴきならない欠点もあるわけで。

しかし湿布に関しては実はそれ以上にスタンダードでありながら謎めいた作品というのがあって、それが久光の「サロンパス」なのである。常時CMなどでその名を聞かされていることから、皆その名を自然に受け入れている節があるが、これ、意味は?

「サロンをパスできるくらい」の何かなのだとは思う。思いきってこの名称を文章化してしまえば、「これを貼ってサロンをパスできますよ」ということなのだとは思うが、それにしても湿布の効能から遠い。そもそも、ここで言う「パス」の意味が「欠席」なのか「自由入場」なのかで意味はほぼ真逆になるし、「サロン」が「鹿鳴館」なのか「ピンクサロン」なのかでも相当に意味が異なる。

最もプラスイメージ方向へと解釈すれば、「これを貼ることで憂鬱な肩こりが治り、晴れやかな気分で社交場へ出られる」といったあたりだろうか。あるいはもう少し具体的なラインで、「この商品は目立たないし臭いも控えめなので、貼って社交場に出ても失礼にあたらない」という意味か。しかし「臭い控えめ」という売りが、発売当初本当にあったものかどうか。

と無根拠に憶測をめぐらせつつ個人的には、そういった効能とはまったく無関係なところで、「当時の(いつだか知らないが)サロン的な場所に入るために必要な『入場パス』に似たような形状/サイズであった」というような、至極どうでもいい連想から来ているだけのような気がして仕方ないのだが。

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