泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『LIFE IN-BETWEEN』/ROYAL BLISS 『ライフ・イン-ビトウィーン』/ロイヤル・ブリス

現代アメリカン・ロックの王道は、同時期に日本発売された懐古集団CHICKENFOOTよりも、むしろこちらだろう。NICKELBACK、SHINEDOWN、3 DOORS DOWNをはじめ、アメリカで売れているヘヴィ・ロックど真ん中に位置する音楽性には、日本デビューとなる本作においてすでに自信と安定感が漲っている。

アルバムとして入手可能なのはこれと前作『AFTER THE CHAOS Ⅱ』(日本未発売)のみのようなので、実質的には2ndとなるのかもしれないが、それ以前にも何枚か小規模でのリリース実績があるようで、その経験値はストレートに楽曲の充実度に反映されている。

とにかくVoの歌が素晴らしく、やはり歌の力という意味では、アメリカ人もしくはアメリカで勝負できるバンド(カナダ出身のNICKELBACKなど)は群を抜いている。個性による味つけや、下手ウマを個性と言い張る勇気に支えられた歌の良さではなく、純粋に歌唱力と感情表現で挑んでくる堂々たる姿勢が潔い。その底力ともいうべき実力は、ライヴ・パフォーマンスを中心とするごまかしの効かぬ音楽市場に育まれたものか、あるいは世界最大規模の競争相手と聴き手の「量」に揉まれ磨き抜かれたものか。

全体としてミドルテンポのヘヴィな楽曲とバラードがほぼ均等に配置されているが、⑦“By & By”をはじめとして、メロディアスな歌メロを生かしたバラード系楽曲に特に魅力的なものが多く、1stシングルとなった①“Save Me”系のヘヴィ・ロック曲は、良質ではあるが若干パンチに欠ける印象。そういう意味では、ギターをはじめとするバックの演奏陣にもう少し工夫が欲しいが、このさい開き直ってより歌中心の方向へ進んだほうが魅力は増すかもしれない。

これだけ質の高い楽曲を持ってしても、日本では大して売れないのがアメリカン・ヘヴィ・ロックの現状であるのが悲しい。アメリカ本土でバカ売れしているSHINEDOWNやDAUGHTRYが来日しないなんてむしろ異常事態だが、それが現実。アーティスト側も、すでに本国で売れてしまえば日本市場は取りこぼしても問題ない規模なのだろうが、いずれも日本のリスナーにも十二分に通用するメロディを持っているだけに残念でならない。

こういう本物のバンドを見逃すことは、日本の洋楽文化全体にとっても必ずや損失になるだろう。しかし日本においては、この手のヘヴィ・ロックはHR/HMと一般ロックの狭間で、両者からよそ者扱いされる立場にいる。できればビールか車のCMソングにでもなって、万人の耳に届く機会が与えられると良いのだが。

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