泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『THE DEVIL YOU KNOW』/HEAVEN & HELL 『ザ・デヴィル・ユー・ノウ』/ヘヴン・アンド・ヘル

期待していたほどではないが、予想よりは良い。特に新しさはないが、意外なほど古さもない。手に入れてすぐは、なぜだか何度も聴きたくなるが、そのうちパッタリと聴かなくなる予感がする。聴き込めば良くなるかと思う瞬間も多いが、すでに飽きている部分もかなりある。

全体として、このラインナップによる前作にあたる失敗作『DEHUMANIZER』に比べれば、同方向ではあるがクオリティは高い。その質は、主にディオによる歌メロの充実と、アイオミのアルペジオの美しさに支えられている。もちろん名盤『HEAVEN AND HELL』に比べれば叙情性も疾走感も足りない(そこを目指していない)が、同等の美意識は感じられる。

方向性もクオリティも、『MOB RULES』と『DEHUMANIZER』の間に位置する順当なものだ。やれることをやったという感じ。だが一つ一つの仕事が丁寧であるため、アレンジも気が利いているし、音作りも楽曲を最大限生かす方向へ的確に機能している。

最低限の素材で良質な料理を作り上げる職人芸は、ベテランならではのものだと言える。しかし一方で、引き出しは多いが素材の少なさを感じるのも事実。どこを切っても安心のSABBATH印が刻印されてはいるが、だからこそどこを食べても同じ味。オジー期に比べても楽曲のバリエーションは少ないと感じるが、その幅の狭さがクオリティを保つ秘訣であるのも納得はゆく。どうせ方向性を絞るなら、“Neon Nights”“Die Young”系疾走曲の無茶振り連打を見たかったが、年齢的に無理があるか?

雰囲気は充分、だがライヴで本作からの楽曲を連発されるとつらい。そういう作品。

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