泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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桜の樹の下には屍体が埋まっているらしいので

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 桜の樹の下には屍体が埋まっている、と梶井基次郎は言った。だとするならば――

 クワマンの下にはセカンドバッグが埋まっている。

 しょんべんカーブには虫が止まっている。
 
 Tカードには使うほどでもないポイントが溜まっている。

 ガチャガチャのカプセルには原価の低い夢が詰まっている。

 ナンチャンの庭にははっぱ隊が埋まっている。

 公園のベンチには受け子が待っている。 

 何も言えなかった夏のあとには言い過ぎる秋が待っている。

 言い過ぎた秋のあとには言いたいことも言えないこんな世の中にポイズンが盛られている。

 秋田のなまはげには包丁のスポンサーがついている。

 テレビ東京は池の水を抜いている――。


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Love Metal

Love Metal

  • アーティスト:HIM
  • 発売日: 2003/06/19
  • メディア: CD

ディスクレビュー『X MARKS THE SPOT』/ART OF ILLUSION

雑味のない北欧的美旋律が、QUEEN影響下にあるオペラティックなアレンジによって豪華に彩られる。満を持して登場した万華鏡の如きファンタジック・ハード・ロックの傑作である。傑作という言葉を易々しく使いたくはないが、このレベルならば許されるだろう。今のところ早くも過小評価されているように見受けられるが、こういう作品こそ届けるべき人にきちんと届けなければならない。

僕はこの作品を聴いて、ROBBY VALENTINEの1stを思い出した。「北欧美旋律+QUEEN」という魅惑の方程式は、まさに彼がトライして1作目で完成させてしまった形でもある。それをこの時代に、百戦錬磨のベテラン二人によるユニットが創りあげたというのが面白い。

もちろん、北欧メタル界隈ではそれなりの実績を持つ二人が手を組んだ以上、彼らが過去にリリースした作品との比較は免れないだろう。そのバンド名からして、アンダース・リドホルム(Key, Ba, Gt)のGRAND ILLUSIONと、ラーズ・サフサンド(Vo, Key)が在籍するWORK OF ARTを合体させたものである。ラーズに関しては、より歌に焦点を当てたLIONVILLEの作品でも好評を博している。

個人的には、GRAND ILLUSIONにしろWORK OF ARTにしろLIONVILLEにしろ、いずれも雰囲気は好みであるにもかかわらず、どうにも決め手に欠ける印象が終始あった。特にGRAND ILLUSIONに関しては、曲の出来不出来に波があるというよりは、むしろ全曲が平均的に寸止めであるという、逆に奇跡的ともいうべき感触に妙なもどかしさをずっと感じていた。

音楽に限らず、どんなジャンルにもそういうものを創る人はいて、ひとことで言えば小さくまとまっているとか、器用貧乏とか言われてしまうのだと思う。僕にとってアンダース・リドホルムという人はまさにそういう人だったわけだが、それがまさかここへ来て、しかもこんなにも鮮やかな形で壁を突破するとは、まったくの想定外だった。

このART OF ILLUSIONの音楽も、当然のようにGRAND ILLUSIONの延長線上にはあるが、しかしあの頃とは違って確実にどこか突き抜けている。その要因がラーズの美声を手に入れたことによるものなのか、アンダース本人の中で何か決定的な変化があったのかはわからないが、こういうことが起こるから音楽というのは面白い。音楽に限らず芸術全般、芸術に限らず人間の面白さと言うべきかもしれないが。

伸びやかな歌声、思いがけず劇的な展開、痒いところに手が届くアレンジ、華やかな音作りなど、全方位的に隙のない作品であるが、その中心にはやはり耳に残る透明度の高い北欧美旋律が核としてある。そしてそのフックのある旋律の強度それ自体が、この作品を突き抜けたものにしている。

たとえば⑩「Catch You If I Can」。「Catch Me If You Can」というフレーズならば、ディカプリオの映画タイトルとして強く耳に残っているが、その「You」と「I」が入れ替わったこの曲名は、なぜだかもの凄く言いにくい。

しかしそんな違和感のあるフレーズにいったんメロディの魔力が掛かると、違和感は消えるどころか、むしろその響きが思いのほかしっくり来ることに気づかされる。そしていつしかそっちの語順のほうが癖になり、気づけばメロディに載せてこの曲名を口ずさんでいる。

メロディには、言葉に新たな命を吹き込む力がある。これはグルーヴ全盛の現代にあってもメロディの力を信じ続ける人に向けられた、とても美しく力強い作品である。


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ロビー・ヴァレンタイン

ロビー・ヴァレンタイン

言語遊戯「ことわざ延長戦」第4戦

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本来短く言い切るからこそ意味のあることわざに、余計な情報を足して無駄に長くしてみようという究極の蛇足企画第4弾。

いわば引き分けでもないのにおこなわれる不毛な延長戦。理由なく長すぎて松木安太郎も怒り出す不可解なアディショナル・タイム。

長引けば長引くほどに空洞化するその意味を、ドーナツのように味わっていただければこれ幸い。


◆《腐っても鯛》
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 《腐っても鯛、新鮮でも虫》

【意味】海外ロケでリアクション芸人に出されるゲテモノ料理は、どんなに新鮮でも嫌なものである。

【解説】むしろ新鮮なほうが嫌なくらいかもしれない。


◆《短気は損気》
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 《短気は損気、ヤンキーはドンキ》

【意味】短気を起こすと結果として損をするが、そんな短気なひとほどドンキホーテに集まりがちである。

【解説】なんでも置いてあるというドンキの万能感を求めて集まるのか、単に夜中も開いているからか。


◆《笑う門には福来る》
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 《笑う門には福来る、借りた消しゴムの角使うと鬼来たる》

【意味】忘れてもクラスメイトに笑顔で頼めば消しゴムを貸してくれるが、勝手にカバーを脱がせてまだ使っていない角を使って返すと鬼のように怒られる。

【解説】怒りっぽい人が丸くなることを「角が取れる」というが、消しゴムの場合はむしろ角を取ると怒られるので要注意。


◆《昔取った杵柄》
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 《昔取った杵柄、骨折れても出た衣笠》

【意味】その昔、連続試合出場記録を持つ鉄人と呼ばれた男がいて、彼にはデッドボールで骨折した翌日にも打席に立ってフルスイングしたという伝説がある。転じて、なんか凄い無茶する人っているよ、的な意味(適当)。

【解説】意味がなさすぎる。


◆《火中の栗を拾う》
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 《火中の栗を拾う甘栗太郎の店員》

【意味】それが仕事。

【解説】ことわざが説明文に進化。むしろ明らかに退化。ちなみにアントニオ猪木のモノマネでお馴染みだった芸人の春一番は、元甘栗太郎の店員。一、二、三、合掌。


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