もちろん、北欧メタル界隈ではそれなりの実績を持つ二人が手を組んだ以上、彼らが過去にリリースした作品との比較は免れないだろう。そのバンド名からして、アンダース・リドホルム(Key, Ba, Gt)のGRAND ILLUSIONと、ラーズ・サフサンド(Vo, Key)が在籍するWORK OF ARTを合体させたものである。ラーズに関しては、より歌に焦点を当てたLIONVILLEの作品でも好評を博している。
個人的には、GRAND ILLUSIONにしろWORK OF ARTにしろLIONVILLEにしろ、いずれも雰囲気は好みであるにもかかわらず、どうにも決め手に欠ける印象が終始あった。特にGRAND ILLUSIONに関しては、曲の出来不出来に波があるというよりは、むしろ全曲が平均的に寸止めであるという、逆に奇跡的ともいうべき感触に妙なもどかしさをずっと感じていた。
このART OF ILLUSIONの音楽も、当然のようにGRAND ILLUSIONの延長線上にはあるが、しかしあの頃とは違って確実にどこか突き抜けている。その要因がラーズの美声を手に入れたことによるものなのか、アンダース本人の中で何か決定的な変化があったのかはわからないが、こういうことが起こるから音楽というのは面白い。音楽に限らず芸術全般、芸術に限らず人間の面白さと言うべきかもしれないが。