泣きながら一気に書きました

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The お前が歌うんかい!~「Set The World On Fire」/GIOELI-CASTRONOVO~

かつて『ダウンタウンのごっつええ感じ』で、傷心の客のためにレコードをかけたバーテンダーが、その曲のイントロが終わると自ら歌い出し、「お前が歌うんかい!」と思い切りツッコまれるというシリーズコントがあった。

ちょうど今年に入ってから『水曜日のダウンタウン』で、その「お前が歌うんかい!」シチュエーションで的確にそうツッコめるかという実験をやっていた。

――という思い出を再入力するような流れがあった上で、このMVが存在する。いやそんな「流れ」があるのはきっと僕の脳内だけで、当人らはもちろんそんなつもりで作っていないに決まっているのだが、いったんそう思って観ると、もうあの流れを汲んでいるとしか思えない。まずは観てほしい。

◆「Set The World On Fire」/GIOELI-CASTRONOVO
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「お前が歌うんかい!」迷いなく、そう思っていただけたのではないだろうか。しかしこの二人の組み合わせからすると、思ったよりハード・ロックというよりはメタル寄りの鋭利な曲で、アルバムにも期待できそうだ。それにしても、ディーンのドラムは相変わらずタイトの極み。

このGIOELI-CASTRONOVOとは、元HARDLINEのジョニー・ジョエリとディーン・カストロノヴォが組んだプロジェクトである。HARDLINEといえば、JOUNEYのギタリストであるニール・ショーンが結成したバンドで、ジョニーとディーンの二人は1992年のデビュー・アルバム『DOUBLE ECLIPSE』で共演している。

しかしこの『DOUBLE ECLIPSE』というのが、実はけっこう評価の難しいアルバムで、メロディアスなアメリカン・ハード・ロックの名盤には違いないのだが、何しろ肝心な頭の2曲が、脳天気なだけでメロディーが全然良くないのである。

それ以降は、「Love Leads The Way」「Change Of Heart」「Can't Find My Way」のように美麗なバラードから、「Everything」「Hot Cherie」のように硬派なハード・ロックまで、少なくとも過半数はJOURNEYの名曲群に勝とも劣らない、いやエッジが効いている分こちらのほうが良いとすら言いたくなるくらい素晴らしい楽曲が揃っている。

それにしても、アルバム中1、2を争う名曲「Love Leads The Way」が日本版ボーナストラック扱いであるというあたりにも、「こんなに良い曲が書けるのに、こんなに良い曲を選べないとはどういうわけか?」という疑問が残るのだが。ちなみに2nd以降は同じバンドとは思えないくらいパッとしなくなってしまった。

その後、Vo.のジョニー・ジョエリはAXEL RUDI PELLなどでも力強い歌唱を聴かせてくれていて、声量、声質ともに超一流の歌い手であると聴くたびに思う。

一方で「お前が歌うんかい!」とツッコまれるべき側のディーン・カストロノヴォのほうも、シンガーとしての経歴を着実に積み上げており、最近だと彼が参加しているREVOLUTION SAINTSのこの曲なんかも、やはり「お前が歌うんかい!」なのであった。そういえば当ブログで、2017年の年間ベストアルバムで7位に選んでいた作品。

◆「Light In The Dark」/REVOLUTION RAINTS
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しかしこちらは、やはり専任ヴォーカルが前に立っていないので、演奏者の誰かが歌い始めるという予感があるぶん、若干良心的であると言える(良心って何かね?)。

それに比べると、先ほどのGIOELI-CASTRONOVOのほうは、明らかにヴォーカリスト然としたジョニーがフロントに堂々立っているから、それが一種の陽動作戦として機能している。それを踏まえてもう一度観ていただこう。

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いったんジョニーに視線を食いつかせておいてから、逆をついて後方のドラマーが歌うという奇襲攻撃。日本代表の夢を打ち砕いた、あのベルギーの高速カウンターの如し。やはりこちらのほうが、「お前が歌うんかい!」指数は圧倒的に高い。

日本で「歌うドラマー」といえば稲垣潤一C-C-Bと相場が決まっているが、ここにディーン・カストロノヴォを加えて「世界三大歌うドラマー」としたい。異論しかないであろう。

SET THE WORLD ON FIRE

SET THE WORLD ON FIRE

ダブル・エクリプス

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