この世に変わらないものなどない。それは言語に関しても同様で、昨今の若者言葉に代表されるように、言葉もまた様々に姿を変えることで今日まで生き延びてきた。
そうでなくとも、そもそも動詞には活用形というものがあって、使われる状況によって語尾が頻繁に変化する。しかし一方で変わらない言葉というのもある。その筆頭が固有名詞である。
なるほどそれは、さすが「固」という字を頭に戴いているだけあってなんとも意固地で、周囲がどうなろうと頑なに姿を変えようとしない。
だがそのように凝り固まった価値観では、いつか時代に取り残されてしまう。やはりどんなジャンルにも、柔軟な発想というものが必要不可欠なのである。
というわけで、固有名詞を勝手に活用、というかいっそ気まぐれに調理してみたいと思う。ちなみにここまで述べてきた理屈は、すべてこの文章になんとなくハクをつけるためだけに存在する。そこに主張など何もない。すべては以下に挙げる人名を調理してみたいという一点に端を発している。
「スーザン・ボイル」
今さらと思われるかもしれない。しかし先日、久々にこの名前を耳にした際に、なんだか「惜しいな」と感じてしまったのである。その時に抱いた感想をより正確に言えば、「この名前には、なんだかもっとふさわしい形があるような気がする」。
よくわからないが、なぜだかもっと「おいしくなる」ような気がするのである。いやもちろん全然食べたいとは思わないが、事実そう感じたのである。そこで僕は、この名前を調理することを決意した。そして気まぐれに調理した結果、スーザン・ボイルは以下のような名前に仕上がった。
「ボイルド・スーザン」
生々しい人名にしっかりと「火を通す」ことにより、一気に「幸せな朝食感」が出たのではないだろうか。やっていることはまるで石川五右衛門の釜ゆで処刑だが、いったん「ボイルド・スーザン」と口にしてみると、もはやオリジナルの「スーザン・ボイル」という名が妙に生臭く感じられるような気がしないでもない。
ちなみにイギリスの映画俳優「ベネディクト・カンバーバッチ」は、すでに調理済みの名前であると思われる。彼はボイルド・スーザンの「エッグ・ブラザー(卵弟)」にあたる。
こうなると板東英二も、そろそろ名前を調理する必要があるのかもしれない。
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