泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

羊たちのランボー 怒りのカジュアルフライデー…金

なんでもかんでもネガティブに傾きがちなこのご時世。しかし景気や株価が風評世評に少なからず左右されるように、ちょっとした噂や評判で世相が一変してしまうことも珍しくない。そしてそんな評判の中身を構成しているのは、もちろん「言葉」であるわけで、だとしたら何はなくとも言葉さえポジティブな響きに変換してしまえば、世相を丸ごと明るくすることができるのではないか。

――というのは書いてもいない企画書にいかにも書きそうな大義名分として書いてみただけで、本当は「ただふざけたいだけ」という純粋な気持ちしかない。むしろ言葉の無力感を痛感する結果になるかもしれない。正直、以下のワンフレーズを思いついたというだけでこの文章を書きはじめているのだから。

『13日のカジュアルフライデー』

かの有名なホラー映画『13日の金曜日』を、とにかく明るくしてみようとした結果としてのカジュアルフライデー化。もともとカジュアルだったジェイソンの服装が、短パン&Tシャツ&サンダルそしてビチョビチョの紙製フェイスパックでさらにカジュアルダウン。メイン武器の鉈には、可愛らしいゆるキャラのキーホルダー(結果血まみれ)がぶらさがっていて。なんならおやつを(血だらけの手で)食べながら。結局やることは同じなので明るくなるのは難しいかもしれないが、そこは気の持ちよう。

考えるきっかけとなったフレーズのわりには、どうにも成功とは言い難い出来だが、ならば他にどんな例があるだろうか。意外と思いつかない。ならばこのワンフレーズを適当にツイートでもして丁重に無視されれば良かった。仕方がないので無理やり考えてみる。

羊たちの沈黙は金』

とりあえずホラー映画つながりで近似値を出してみた。偶然だが「フライデー」と「金」で「金」つながりにもなってしまったが意図していないので喜びもない。そもそも、羊たちが沈黙していることをそんなに過大評価してしまって良いものかどうか。鳴かない羊は、泣かない舘ひろしくらい不気味だ。いや舘ひろしは泣くのを止める側の人間であって、最初から泣いてない。誤解だ。次。

ランボー 怒りの駅前留学

「怒りの」という時点で明るく処理するのはだいぶ難しいと思われたが、そんな怒り(帰りの機内で「Beef」って言ったのに「Fish」が出てきた)をバネに語学の学習に励むランボーの前向きっぷりに、「感動した」「勇気をもらった」「胸筋が喋っている」など絶賛の声、続々。

そろそろ映画の題名から離れたい。ならば音楽ではどうか。曲名を前向きにしてみる。

『何も言えなくて…金』

完全に先の「沈黙は金」に引っ張られての「金」。しかし結果的には、「北京五輪で金メダルを獲った北島康介が『なんも言えねえ』と言ったシーン」みたいな感じの曲名になったので、とにかく明るいことには間違いない。実家のメンチカツはバカ売れで嫁はgirl next door

かくして単なる偶然だが目的は果たされた。ただ明るいだけの言葉が、ざらついた現実の表面を虚しく上滑りしてゆく。

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