泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

通販番組にあらわれたネクストレベルの注意書き

深夜の通販番組をなんとなく流していると、お爺さんが商品の魅力を語る画面の右上方に、謎の注意書きがフワッと出現した。

※エキストラ派遣会社を通して応募

何を言っているのであろうか。しかしまもなくそのテロップは消え、「※効果には個人差があります」「※個人の感想です」といった見覚えのあるテロップに入れ替わり一瞬の安堵。最初のテロップは幻だったのかもしれない。

だがその直後、お爺さんとお婆さんがなぜか公園のベンチにわざわざ集合し商品の魅力を語り合っているシーンで、恐ろしい注意書きがまたも画面右上に、とても窮屈そうに表示される。

※効果には個人差があります
※個人の感想です
※エキストラ派遣会社を通して応募

またもや例のフレーズが出てきたのである。しかもお馴染みの注を2つも前座に引き連れて。さらにはお米3連発ともなると、その圧迫感はもはや「脅し」レベルである。そもそも「※効果には個人差があります」と「※個人の感想です」というフレーズは、実質的にはほとんど同じ意味なのでこの2文を同時起用する必要があるとは思えない(要は「効くか効かないかは人による」と言いたいだけ)。とはいえやはり引っかかるのは、「※エキストラ派遣会社を通して応募」というよくわからない体言止めのほうである。

通販番組の場合、主役はやはり商品そのものであるから、注意書きも基本的には商品に関わる情報であるはずだと、視聴者は自動的にそう思って観ている。「※個人の感想です」という物言いも、別に発言主に注意せよと言っているのではなく、彼が語る商品情報の信憑性に関して注意を促しているに過ぎない。

しかしこの「※エキストラ派遣会社を通して応募」という注は、商品情報から完全に独立した場所から投げ掛けられている。これはつまり、通販番組に出演しているお爺さんお婆さんにまつわる情報であり、もっと言えば「彼らがこの番組に出演するプロセスについての情報」という、あまりにピンポイントでマニアックな、驚異的にどうでもいい個人情報なのである。これぞ「知らんがな」の極致。

そもそもお決まりの上2つのフレーズ(「個人差」&「感想」)に比べ、なぜこれだけが乱暴な体言止めであり「ですます調」でないのかが腑に落ちないが、それはおそらく文字数が長くなりすぎるからだろう。しかも「採用」ではなく「応募」と表記しているところに、どことなく「勝手に応募してきた感」までほのかに漂っているのが、実に冷酷な後味を残している。

基本的に、注意書き誕生の出発点には必ず何かしらのクレームが存在するわけで、もちろんこの注のきっかけとなったのは、「商品の感想を言ってるあいつらは役者なんじゃないのか?」「他の番組でも同じヤツが違う商品を褒めちぎってたのを見たことがあるぞ」という類のクレームであるはずで、つまりは「ヤラセだろ」という文句が寄せられていたものと想像される。

まあ役者であろうとなかろうと、その商品を本当に気に入って紹介していればヤラセではないということになるわけだが、とりあえず「半分役者」と番組サイドがすすんで認めることで、リアルとヤラセの合間をすり抜けようという巧妙な意志が見える。

むろん想定されるクレームはそれだけでなく、局に対して「あんな演技の下手な素人を出すくらいなら俺を出せ!」といった類の面倒な売り込みもあったのかもしれず、そんな思い上がった野心家たちに「まずはエキストラ派遣会社へどうぞ」と水を向ける(ふりをして実質追い払う)効果を狙っているのかもしれない。

過剰な演技で腰や膝の不調を訴え、あざとい方言で巧みに親近感を醸しだし、軽快なラジオ体操でいかに青汁が体に効いたかを盛大にアピールする。そんなエキストラ派遣会社のめくるめく面接風景が目に浮かび、それはそれで幸せなのかもと思うことにする。

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