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泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『OUTRAGED』/OUTRAGE

OUTRAGED(初回限定盤)(DVD付)

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OUTRAGEの集大成であるだけでなく、HR/HMがこれまで歩んできた歴史を丸ごと飲み下すような、器のデカさと豊潤な味わいを感じさせる作品である。

正直、ピンポイントで期待していた方向性ではない。先行PV曲「Lost」を聴いた時点で、名盤『THE FINAL DAY』のような、ソリッドに中央突破するスラッシュ・メタルへの回帰を期待してしまったのは間違いない。だが期待とは、単なる「想定」でもあるわけで、いくら期待に応えてもそれは「想定内のベスト」でしかない。本作の魅力は、そんな想定範囲を越えたところにまで達している。逆に言えば期待というものはその程度の、過去のデータから抽出した範囲内のものでしかない。

橋本直樹復帰作となった前作『OUTRAGE』はこれまでのOUTRAGEの集大成のような作品であり、だからこそのセルフタイトルであったと考えるならば、『OUTRAGED』という本作のタイトルを、過去のOUTRAGEへの回帰作と捉えるのは一見辻褄が合うようにも思える。

一般に、集大成的な作品の直後のアルバムは非常に難しい。引き続き「集大成以上の集大成」をやってもほぼ変わらないものが出来あがってしまうし、かといって新境地を切り拓くとなると、「集大成にするほど価値のあったもの」を、そのファンとともに丸ごと置き去りにすることになる。

だがそれはあくまでもバンド内に視野を絞った範囲内での考え方でしかなくて、言うまでもないがそのバンド以外の音楽というのは無数に存在する。というと無制限に視野を広げすぎで何も見えてないのと同義だが、より現実的に考えてみると、そのアーティストの「集大成」という言葉は、二通りに解釈することができる。ひとつは「自らが作ってきた音楽の集大成」であり、いまひとつは「自分たちが受けてきた音楽的影響の集大成」である。一般に「集大成的作品」と言うと前者の意味で用いられることが多いが、今回の『OUTRAGED』という作品は、明らかに後者の意味での「集大成」的作品である。

当然だが、アーティストは自らが受けた音楽的影響のすべてを、自作に反映させられるわけではない。受けた音楽的影響の幅が広ければ広いほど、すべてを取り込むことは難しくなる。アーティストも音楽愛好家の一人である以上、作った曲数より聴いた曲数のほうが圧倒的に多いはずだからだ。もちろん、すべてのアーティストが先人達から影響を受けているのは自明であり、「誰の影響も受けていない」というような戯れ言はむしろ豊かな創作活動への冒涜である。

本作が取り込んでいる音楽的影響の豊かさには、JBがいた頃のSPIRITUAL BEGGARSを彷彿とさせるものがあるが、疾走曲からグルーヴ渦巻くヘヴィ・ロック、そしてバラードに至るまで、バリエーション豊かなその全編を貫いているのは、どこまでもOUTRAGEらしい繊細なメロディである。歌メロにしろギター・ソロにしろ、至る所に美しいメロディが遍在しており、通常ならば感傷を拒否するような楽曲にまで、要所要所に惜しげもなく繊細な美旋律が投入されている。そういう意味では過去最高にメロディアスな作品でもあり、多彩でありながら揺るぎない核を持つアルバムである。


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