泣きながら一気に書きました

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『THE LIVING INFINITE』/SOILWORK

The Living Infinite -Limited 2CD Digipak- [from UK]

The Living Infinite -Limited 2CD Digipak- [from UK]

なぜか聴くたびに印象が変わる。メロディもリズムも全編フックに溢れていて近年稀に見る名盤だと感じることもあれば、すべてが右から左へと流れ気がつくと再生が終わっているということもある。もちろん、それはこちら側の脳内問題なのかもしれないが、僕にとってソイルワークはなぜかそういうバンドである。

9作目となる本作は、ピーター・ウィッチャーズの再脱退や2枚組といったわかりやすい不安要素はあれど、基本的には相変わらず『NATURAL BORN CHAOS』以降の音楽性に貫かれている。「急発進からサビ前で急減速してサビメロをフワッと浮遊させる」という楽曲構成がすっかり板についているため、やはり感触として似た曲が多いのは否めないが、一方でここへ来てDISC1⑨「The Windswept Mercy」やDISC2④「Antidotes In Passing」のように、明確に「ニュー・ウェイヴ影響下にあるUKロック」寄りの穏やかなメロディが聴かれるようになってきたというのは、意外と重要な変化と言えるかもしれない。

もちろんこれまでも、『NATURAL BORN CHAOS』をデヴィン・タウンゼンドがプロデュースしたのをきっかけとして、それ以降音像面におけるニュー・ウェイヴ的感触は顕著になっているが、その影響がいよいよメロディの中身にまで無理なく浸透してきたように感じる。特に「Antidotes In Passing」は、80年代後半に大ヒットを飛ばしたUKロックバンドTEARS FOR FEARSにかなりメロディの質感が似ており、歌い方も明らかにその影響下にある。本作を聴いて最も印象に残ったのが、実はこの曲だった。この曲を気に入った人は、ぜひTEARS FOR FEARSの『THE SEEDS OF LOVE』という作品を聴いてみてほしい。無論SOILWORKほどの激しさはないが、この曲におけるメロディは完全にその支配下にある。

全体として、やはり似たような曲調が多いため飽きるといえば飽きる、しかし浸れるといえば浸れる作品である。個人的にはもっと思い切ってUK寄りにしても、少なくともIN FLAMESよりは上手くやれるような気がする(IN FLAMESのここ二作はそれに失敗していると思う)が、やはりスピードとアグレッションはメタル・バンドとしての生命線ではあるだろう。そういう意味では、二枚組という長尺でありながら硬軟バランスの取れたアルバムである。作品として良質なのは間違いがなく、問題は飽きるか飽きないかの一点に絞られる。


The Seeds of Love

The Seeds of Love

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