流行とは怖いもので、東進ハイスクールのCMに端を発し、トヨタのCMですっかりメジャー感を獲得した林修先生の「いつやるか? 今でしょ!」という決め台詞も、すでにこすり倒された感がある。しかし使い古されたからといってなんでもすぐに捨ててしまうのは、時の流れに支配された鬼畜の所業である。かといってブックオフに売れるわけでもない。となると我々に残された手段は、その新たな使い方を模索することだけである。
「新たな使い方」というと大層に響くかもしれないが、そんなことはない。単に「間違った使い方」をすれば良いのである。間違った使い方というのは、基本的に新しい。たとえば着古して穴のあいたジーンズを、「これこそがお洒落なんだ」と言い張って穿いているうち、広くファッションとして認識されたように、堂々たる間違いはいつか定番として世に認知される可能性がある。ここはむしろ、ダメージ流行語のヴィンテージ感を楽しむ術を身につけていきたいところ。
たとえば以下のような誤用例を身につけることで、我々は自らの人生に、ダメージジーンズの如く小洒落たダメージを受けることができる。
【気のない社交辞令に】
「今度ぜひ飲みにいきましょう」
「いつ飲むか? 今でしょ!」
【わからないテスト問題の解答に】
問:《応仁の乱の年号を記せ。》
解答欄:〔いつ乱か? 今でしょ!〕
【ありがちなメッセージソングに】
「やまない雨はないさ」
「いつやむか? 今でしょ!」
【しつこいプロポーズに】
「僕は死にましぇん」
「いつ死ぬか? 今でしょ!」
【猪木に】
「イチ、ニィ、サン、」
「今でしょー!」
もう古いなんて言わせない。我々には、今しかないのである。