泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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美容院関ヶ原

不精なのでわりと短髪のくせに美容院には3ヶ月に1度くらいしか行かなくなっているのだが、それゆえ切り終えて足元を見ると明らかに頭上よりも多くの毛髪が落ちている。つまり切られていない分量よりも切られた分量のほうが見るからに多い。頭上に残っているのが勝ち組で足元に落ちているのが負け組であるという価値観に異論はないはずだから、関ヶ原の戦いでいえば頭上が東軍(家康側)で足元が西軍(三成側)ということになる。足元に落ちているほう(西軍)がやや多いのに負けたという意味でも、これはまさに関ヶ原と言うほかない。

西軍が負けたのは悲しいが、それは戦国の世のならいであるから仕方ない。しかし問題は、上記の流れで考えていくと必然的に、自分の頭上には裏切り者の小早川秀秋が残っているということである。小早川は西軍でありながら東軍へと寝返り、西軍惨敗のきっかけを作った裏切り者である。足元に落ちるはずだった髪の毛のほうから、頭上に残った髪の毛のほうへと寝返ったのである。

だからいま俺の頭の上のどこかには、家康の威嚇射撃にビビッて寝返った裏切り者が乗っかっている。今後髪型をセットする際には、くれぐれも小早川の位置を考えて分け目を決めなければ大変なことになる。これはもう、毎日が天下分け目の決戦であると言っても過言ではない。4:6で分けた髪が、小早川の寝返りにより6:4に逆転したら天下国家が覆る。その後250年の歴史が変わる。ちょうど不精から武将の話になったので髷を結いながら終わる。

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