泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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ウォーターメソッドマン

(真夏のファミレスにて)

田中「あーもう暑くて死にそう。死なねえけど」
原「喉乾いたね。かなり危機的状況かも」
田中「なに頼む? ここドリンクバーあったよな」
原「ああ、俺、水でいいや」
田中「なんで? そんな金ねえの?」
原「いや、そういうわけじゃないけど」
田中「あ、じゃあなんか別の頼む?」
原「いいよ、水で」
田中「やっぱ金ないの? おごるよ、ドリンクバーくらいなら」
原「いや、水じゃなきゃ冷えないんだよね」
田中「まあ確かに暑いけど、ジュースとかも氷入れりゃ冷えるでしょ。氷入れていいの知らねえの? なんかシャベルみたいので」
原「知ってるけど。水じゃないと」
田中「何? 病気?」
原「病気ってゆうかまあ、ちょっと壊れてはいるんだけど」
田中「腹壊してんの? じゃあむしろ冷やしちゃ駄目じゃね?」
原「いや、冷やし続けないと駄目なんだよね。何年も」
田中「何年も? 大変な病気だな。じゃあアイスとか食う?」
原「いや、水で。最悪、塩水で」
田中「塩水? すげえ体に悪そうだけど」
原「でも、冷えないよりは」
田中「まあ、ファミレスに塩水ねえけどな。いや、あるっちゃあるっつーか、塩と水はあるんだろうけど、メニューには」
原「でもちょっと前まで塩水ばっか飲まされてたから、普通の水飲みたいかも」
田中「飲まされてたって、誰に?」
原「会社。いや、国かな」
田中「国? なんかお前、実はスゲー奴? もしくは宇宙人的な?」
原「(通りすがりの店員と目が合って)あ、すいませーん。水くださーい! 放水車で」

……というくらい、「原発に水」ってのは、なんだか不相応な気がする。いや水は基本なんだろうけど(飲食店の「お冷や」的な意味で)、冷やす手段が、あくまで「水」しかないというのが。滝に打たれる修業のような、プリミティブな何かを感じる。何か原発にとってもっと「おいしい」飲み物があるような気がしてしまうのだが。(米軍が用意してくれた「冷却剤」というのは、早い段階で断ったのだったか)

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