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泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『WE'VE ALL BEEN THERE』/ALEX BAND

音楽レビュー(ROCK)

まずジャケットを観て「すわ、ヴィジュアル系に転身か」と驚くが、裏ジャケには通常の立ち姿が平然と写っていて、音楽性も特にそっち方面というわけではない。

さらに言うなれば、もひとつ紛らわしきはそのアーティスト名。「アレックス・バンド」と言われるとついつい「アレックスのバンド」と解釈しがちであるが、この人の場合個人名が「アレックス・バンド」なわけで、だとするとその名前をバンド形態と掛けて二重の意味で「アレックス・バンド」としているのか、それとも単純に個人名を掲げてのソロ・アルバムなのかよくわからない。

意外と思わせぶりな人だ。

THE CALLINGで2枚のアルバムを発表後、解散。そのヴォーカリストが6年ぶりにようやく届けてくれた作品である。

相変わらずスマートなルックスからは想像もつかないくらいの、渋さと深みを感じさせる声が魅力的なアメリカン・ロック。基本的にTHE CALLING時代と大幅なブレはないが、かのバンドの1stがハード・ロック寄り、2ndがアコースティック風味であったのに対し、今作はやや演出過多な壮大さがあって、とはいえそれはハードで刺激的なタイプの演出ではなく、アコースティックを基調にしつつストリングスを導入するという、落ち着いた広げ方をしてある。

やはりギタリストであり共作者であったアーロン・カミンがいないというのは少なからずその音楽性に違いをもたらしており、バンド時代に比べると、メロディはさらにストレートな印象。一聴すると、エレクトリック・ギターの細やかな動きが見られないぶんを、ストリングスの迫力圧力で誤魔化しているような気もするのだが、聴き込むにつれ、その一音一音のアレンジの妙を感じ取れるようになる、といったタイプの作品。

どれも曲調やテンションが似ているせいもあって、聴き込みが浅い段階ではかなり平坦な感触もあるが、と同時に全体のトーンに上手く馴染めれば、ついつい聴き続けてしまう中毒性もある。

タイトル的にもそれ系な⑫“Without You”はU2の某曲にそっくりすぎて驚くが、それがまた全体の一様な流れの中でアクセントにもなっているのが悩ましいところ。THE CALLINGの1st収録のヒット曲“Wherever You Will Go”ほどのキラー・チューンは見当たらないが、アルバム前半部は良いが後半はそうでもなかったバンド時代に比べると、頭から尻尾まできっちりあんこが詰まっていて、全体の精度という意味ではしっかりと成長を感じることができる。

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