泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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消化不良の偽ハングリー

「あー、胃がもたれたなぁ」と思って胃薬を飲むと、徐々に事態が改善されて数時間後にはすっかり良くなりまたグーグーと腹が減るのだが、さてその「腹の減り」が果たして本物なのかどうか。

といっても、「あくまでもその『腹の減り』は胃薬という非常手段によって人工的にもたらされたわけだから」というような精神論的な意味でそれが本物の減りかと問うているわけではない。どんなに卑怯な手段に頼ろうが、腹の中が空っぽな状態であれば腹は減っていると言っていい。

むしろ問題なのは、その胃薬によって減った腹に調子に乗ってバクバクと食料を放り込むと、たちまちに再度胃がもたれることにある。となると、またしても胃薬を飲まなければならなくなる。という無限ループ。

となると、この胃薬によってもたらされた二度目の腹減りは、元々の腹減りに比べると、減ったとはいえ八分程度と心得て控えめに食べるべきなのか、あるいは減ってはいるがまだまだ調整中だから食べずに次の食事時間帯まで我慢すべきなのかという疑問が。

前者だとしたら八割方ではあるが本物の腹減りと言えるが、後者ならばこれは偽物の腹減りではないか。腹が減ったと見せかけて食べ物を受けつける準備が一切できていない。グーグーと景気よく鳴らして呼び込んでおいて、食べ物が胃の腑へと入ってきたら知らぬ存ぜぬとぼけ面。早く次の胃薬をよこせと不貞腐れもたれてみせる。これはもう育ちが悪いとしか言いようのない不良息子。

とはいえ分量的には、胃薬を飲む前に充分な量を食べているのだから、胃薬でまた腹が減ったからといって食べたら二食分になってしまうのか。ただでさえ胃下垂で、食ったりもたれたりを人より多く繰り返しているような気がするのだし、考えてみたら食べるという行為をグルメな人たちほど好きなわけでもなんでもない。むしろ何かを食べるという作業が心から面倒臭いぐらいで、「何食べたい?」と訊かれるといつでも答えられない。そんなに量食べるほうでもない。浪人生のころはカロリーメイトばかり食べていた。

だからこそ、世の中が食だグルメだと言って胃をもてはやし、そのもてはやされ甘やかされた胃のわがままに翻弄されることが残念でならない。胃のくせに。ちなみに僕の場合、頭痛の原因まで胃もたれであることがある。

胃薬には、胃薬を飲んで胃もたれが治ったあとの生活態度なども書いておいてもらいたい。家に帰るまでが遠足であるように、次の食事まで、いや寝るまでが胃薬なのだから。

書かれても守らない自信がある。

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