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泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『SLASH』/SLASH 『スラッシュ』/スラッシュ

改めて“ギタリスト”スラッシュの実力を思い知らされた。逆に言えば、スラッシュはあくまでも、いちギタリストとして優れているということだ。ソングライターとしては、スネイクピット時代と同等の物足りなさが残る。

今回は特にギターの音色とフレージングが素晴らしく、オジーから稲葉まで、多種多様な歌い手を集めて制作したわりには、むしろ歌モノとしての魅力はあまりない。

いやもちろんスラッシュは、あくまでも歌があってこそ輝くタイプのギタリストであって、そういう意味で歌は「パーツとして」彼には絶対に必要な要素ではある。

聴けばそれとすぐにわかる濃ゆいヴォーカリストを多数起用しているため、それぞれの声も充分に楽しめるようになっており、いわばギターの「音」と歌い手の「声」に焦点を当てたアルバムと言えるかもしれない。ただそれだとやはり、玄人受けのレベルに留まってしまうだろう。中心にもっと強力な歌メロが欲しい。

もちろんこの手のソロ作は、各ヴォーカリストが充分な時間と手間を掛けられぬため、歌メロが練り不足になることは多い。そのためか、いずれも楽曲の雰囲気になんとなく合わせたような歌メロが多く、主役の座をあっさりとギターに受け渡してしまう。それはスラッシュのギターが強力であることの裏返しでもあるのだが、もっと曲を引っ張ってゆくような明快なメロディを求めてしまうのも事実。

そういう意味で、歌メロに最も可能性を感じたのは紅一点のファーギーで、“Paradise City”のカヴァーでも発揮されていた相性の良さは本物かもしれない。

また、AVENGED SEVENFOLDのシャドウズが歌う⑪は、完全にA7Xにスラッシュが加入したかの取り込まれっぷりがむしろ潔く、こういった欧州的HMを弾くスラッシュをもっと聴いてみたいと思わせる。

これは“ギタリスト”スラッシュの可能性の翼を最大限広げてみせた見本市のような作品であり、いろんな声を通じて彼の一本筋の通った個性が見えたり、また逆にどんな歌にも適応してみせる器用さが伺えたりもする。そういった意味では至極まっとうなソロ・アルバムであり、これを聴いた数多のヴォーカリスト達が彼にオファーの電話を入れたくなるような、そんなプロモーション的役割も果たす作品でもあるように思う。

スラッシュにはぜひとも、良い歌メロが書ける人とバンドを組んでほしいと願う。

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