泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『RAID』/ATSUSHI YOKOZEKI PROJECT 『レイド』/横関敦プロジェクト

技巧派ギタリストのソロ・アルバムというのは、往々にして独りよがりに響きがちであるためか、全編インストという構成を避け、歌モノをところどころ挟み込んでくるパターンが意外と多い。普通に考えればそこには、「本当は全編弾き倒してしまいたいのだが、いくらかはわかりやすい歌も入れておこうか」というような、妥協の香りがどこかしら漂う。

しかし実際には、インストと歌モノを組み合わせた作品には、思いのほか良作が多い。イングヴェイ・マルムスティーンの1st「RISING FORCE」はもちろん時代を変えた名作だが、当時在籍していたMEGADETHとはまったくの別方向を提示してみせたマーティ・フリードマンの「TRUE OBSESSIONS」あたりも、彼の隠し持っていたブルージーかつポップな側面を生かした歌モノの充実が、想定外の喜びだった。

本作は、その壮絶かつ流麗な速弾きから“ジェット・フィンガー”の異名を取る横関 敦の、ちょっと例外的なソロ・プロジェクト・アルバムである。インスト・オンリーだったそれまでの彼のソロ・アルバム群とは、かなり趣が異なる。

基本的には、横関がブラッド・ギルス、ジェイク・E・リー、カーマイン・アピスなど、L.A.人脈を集結させて制作したもので、そこが本作の明確な「売り」となっている。しかしこの手のプロジェクトらしく、中身はそう単純でもない。注目すべきは楽曲クレジットである。全10曲中、5曲が歌モノ、5曲がインストという、ぴったし半々の楽曲構成。インスト曲の作曲にはすべて横関が関わっているが、歌モノは全曲外部ライターによるもので、彼は作曲にタッチしていない。

しかしこの歌モノが、思いのほか良いのである。HURRICANEのケリー・ハンセンがエモーショナルに歌い上げる②は、彼が歌ってきた他のどの曲よりも彼にフィットしている。HURRICANEのメロディアス・サイドと同系統の楽曲だが、メロディのクオリティはその上をゆく。元GIUFFRIAのデイヴィッド・グレン・アイズレーが歌う③、DOKKENのジェフ・ピルソンが歌うEUROPE風バラード⑤、ポップな楽曲の中で元RUNAWAYSのシェリー・カリーの女性Vo.が跳ねる⑦、さらには元BADLANDSのレイ・ギランが縦横無尽に歌い上げる王道アメリカン・ハード・ロック⑧と、L.A.メタルのメロディアスな側面が集約されたような充実楽曲が並ぶ。そこに絡む横関のギターも、違和感なく曲の良さを十二分に引き立てており、彼がバンド・プレイヤーとしても非常に魅力的な存在であることがわかる。

ソロとしての活動期間が長い横関だが、本作を聴くと、バンド・サウンドの中での彼をもっと聴いてみたいと思う。過去に在籍したバンド内においてはさほど輝けなかった感があるが、一流のVo.陣と堂々渡りあったこの作品は、いまだ大きく残された彼のポテンシャルの一端を、雄弁に物語っているのではないか。今後の意欲的な活動に期待している。

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