泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『AURA』/FAIR WARNING 『オーラ』/フェア・ウォーニング

彼らがいない間はその幻影をただひたすら探し求め、しかし結局のところどれだけ根掘り葉掘り探しても、後継者がいっこうに見つからぬままただ新作の到来を待つという、それほどまでにメロディ派リスナーの圧倒的信頼を獲得しているFAIR WARNINGの、再結成第2弾にして通算6作目。

スカイギターをこれでもかと強調した音像、アートワークの雰囲気、前半に佳曲を集中させたアルバム全体の構成ともに、3rd『GO!』に近い。だが楽曲のクオリティは、すべてにおいて『GO!』をひとまわり縮小再生産した印象。

特に、「バラードが多いのにバラードが弱い」というのが、致命的な欠点になっている。『GO!』の中盤に感じたほのぼのとした気怠さが、中盤から後半にかけてすべてを覆いつくしている。それは具体的な曲名を挙げれば“Man On The Moon”系の退屈さであって、同じバラード系の楽曲であっても、初期に見られたような“Long Gone”や”Take Me Up”のような強烈な泣きを備えているわけではない。つまり本作に対する不満は単に「バラードが多い」という楽曲形式へ向けられたものではなくて、その旋律の方向性とクオリティの問題なのである。1stには一切なく、2nd以降徐々に顔を出すようになってきたこの気怠い感触のメロディーが、いよいよアルバム全体を支配するまでになってきた、という危機感を覚える。それは『4』や前作『BROTHER'S KEEPER』のようなロック色の強いアルバムにおいては奥に引っ込んでいたが、大人しい曲が多くなるとグッと前面に出てくる要素でもある。

とはいえ、無理な若さを気取ったような躍動感と引き替えにメロディが抑え気味だった前作に比べれば、真摯にメロディと向き合って楽曲制作に取り組んだ姿勢が見えるぶん、本作のほうが「らしい」とは言えるかもしれない。

頭2曲を除けば、全体にゆったりとはじまって後半のギターソロでぐんぐんと昇りつめてゆくタイプの楽曲が多く、そういう意味ではかつてないほどにヘルゲのスカイ・ギター頼みのギター・アルバムでもある。これだけフィーチャーされるとさすがに似たようなフレーズも多いが、やはりスカイ・ギターの音色が後を引く強烈な印象を残すため、歌メロが平凡な楽曲でも聴後感はそれなりに良い。

楽曲単位で見ていくと、やはり定番の疾走曲①②と“I'll Be There”的な爽快曲④は安心品質。一方で意外に良かったのは、印象的なベース・ラインが新鮮味を感じさせる⑩“As Snow White Found Out”で、その静かな疾走感は新境地と言える。もちろんメインを張れる方向性の楽曲ではないが、アクセントとしては武器になるタイプの楽曲であり、今後のバンド発展の可能性を感じさせる一曲。

2枚組限定版のボーナス2曲は、可もなく不可もないミドル・テンポの「アウトテイク的な」アウトテイク曲。もちろんそれなりのクオリティはあるが、「なぜこれをアルバム本編に入れないんだ!」という憤りを覚えるほどではない。

本作自体に対する満足度はいまいちだが、不思議と枯れた印象はなく、まだまだ彼らのクリエイティヴィティは衰えていないという実感がなぜか残る。どちらかというと、今回は持てる能力を生かしきれていないという印象が強く、ここへ来て初めてセルフ・プロデュースの限界を感じた。そろそろ外部プロデューサーを迎えて、改めて長所を明確化する、という客観的作業をやってみるのもいい時期かもしれない。

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