泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『BEG FOR IT』/HARDCORE SUPERSTAR 『ベッグ・フォー・イット』/ハードコア・スーパースター

ギタリスト交代の影響か、これまでに比べ、メタル色がさらに強まっている。どの曲もイントロのギター・フレーズが強化され、グッと胸ぐらを掴んでくる。新ギタリストには、どこかHM期のゲイリー・ムーアのような、民族音楽チックな素養があるようだ。特にMETALLICA風イントロダクション①に続くタイトル曲②の冒頭フレーズなど、『WILD FRONTIER』期のゲイリーを彷彿とさせる。同曲のギター・ソロはマイケル・シェンカー的でもある。いずれにしろ相当にギターの旋律が増量されており、まったく音楽的方向性は違うが、MEGADETHマーティ・フリードマンが加入したときのような化学反応が生まれている。

全体を覆うグルーヴ感は、ロックとメタルのちょうど中間に位置するもので、質感としては『METALLICA(通称ブラック・アルバム)』〜『RELOAD』期のMETALLICAに近づいている。となるとNICKELBACKあたりのヘヴィ・ロック勢も視野に入ってくるわけで、彼らが本作をもってアメリカへ乗り込むという戦略は、非常にベストなタイミングであるように思う。これを機に、一気にメイン・ストリームへと駆け上がる可能性もある。

しかし外見的イメージや精神性も合わせて考えていくと、当面の彼らの目標地点は、MOTLEY CRUEの『DR.FEELGOOD』だろう。あの作品の音作りに衝撃を受けたMETALLICAが、そのプロデュースを担当したボブ・ロックを起用して作りあげたのがブラック・アルバムであると言われており、つまり『DR.FEELGOOD』とはまさに、ロックとメタルの架け橋となった作品であった。それは「L.A.メタル」とは言われながらも、音楽的にはメタルというよりはロックであったMOTLEY CRUEが、最もメタルに接近した作品であり、一方ではまたメタルの権化と目されていたMETALLICAが、初めてロックのグルーヴを大胆に導入したブラック・アルバムにおいて多大な影響を受けた作品でもある。

このHARDCORE SUPERSTARが目指しているのも、まさしく「ロックとメタルの架け橋」としての役割であるというのが、本作を聴くとよくわかる。

クオリティ的にはセルフ・タイトルを冠した前々作にこそ及ばないが、やや行き詰まりを感じさせた前作よりはメリハリが利いており、楽曲の質も向上している。ここに何曲か、北欧R&R勢お得意の爆走曲が加わればさらに全体が引き締まったような気もするが、例によって対アメリカ向けには不要かもしれない。あとはやはり、劇的なバラードが欲しい。

アメリカでのブレイクを本格的に狙うならば、AVENGED SEVENFOLDあたりのサポートとして全米を回るプランを立てられれば、道は開けてくるかもしれない。

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