アルバム発売以来、文章にまとめようと思い色々と書きとめてはいたのだが、その成り立ちからして全体像を捉えにくく作られた作品であるからまとめようもない。そもそも、毎度レビューを書く際にまとめようという意識は微塵もなく、考え迷うことをより重視している、というのは言い訳がましくもあり間違いなくそうだが、それもまた事実。そこでこのオムニバス的作品には箇条書きがふさわしいのかもしれぬと都合良く思い立ち、あえてそのスタイルを選び取ったフリをして羅列。むしろ賞味期限切れネタの在庫処分。スーパーは5時からのタイムセール。「5時から男」は割引値札のこっそり貼り替えにご執心。
●アクセルは大人になるべき時期に、ずっと「過程」と闘ってきた。周囲に求められ続けていた「結果」はまったく出さずに。それはただサボっていたように見えるかもしれない。社会人としては間違いなくそうだろう。モラトリアムにしちゃあ長すぎる。
●アクセルとは、デビュー・アルバムで、「過程」を認識する暇もなく結果を出してしまった人。
●実はアーティストはみんな、おそらくものづくりの過程をしっかりとは把握していない。むしろパターン化をおそれる部分もあるから、それはそれで良いのかもしれないが、そうなると次の作業がひどく難しくなる。日常的な仕事のほとんどは、パターンの繰り返しである。インタビューで曲作りの手順を訊いても、まともに答えられないアーティストが多い。そらとぼけているのかと思いきや、たぶん本当に忘れているのだ。だからこそアーティストは、いつでも新曲を作る意味がある。
●ブックレットを開けて驚いた。アクセルの次にバケットヘッドが来ている。まさかとっくのとうに脱退したバケツ頭のギターをそのまま使うとは思わなかった。キャラ重視の姿勢ゆえか? ガンズにバケットヘッドはプレイ面で合わないという評判もあったが、キャラ的には必要だった。そして演奏面でも、相性はけっして良くないが、負けていない。アクセルに負けないというのは、凄いことだ。
●1曲ごとに、何もかも全部入れようとしている。1曲につきアルバム1枚分くらいの時間がかかっているのだろうから、当然といえば当然。だからこそ逆に、アルバム全体のバランスという意識に乏しい。
●アクセルは影響を受けやすい人間なのだ。だからこそ閉じこもる。影響の受けどころで、自分のセンスを微調整してゆくタイプ。
●溜め込んでいたものが腐敗・漏電した部分と、熟成・発酵・爆発した部分がそれぞれある。
●アクセルのソロ・アルバムかと思いきや、かなりのギター・アルバムでもある。ライブではてっきり、自分が休むために長々とギター・ソロをやらせてるのかと思っていたが、本当にギター・ソロが好きなのかもしれない。楽曲後半に差し掛かると、歌のバックで叙情的なギターが暴れるパターン多し。
●あの膨大な楽曲クレジットを見る限り、アクセルは、別れた女からのラブレターを一切捨てられないタイプの、極度なロマンチスト(未練がましい奴とも言う)なのだと思う。
●ロマンチストは遅刻する。遅刻魔。
●本物の不良はロマンチスト。
●厳密な人間には「とりあえず」ができない。
●ヴォーカリストは通常、歳を追うごとに、自分の歌以外を楽曲から引き算してゆく傾向にある。だがアクセルにはその感覚がまったくない。足し算をし続ける思考。そういう意味では子供っぽくシンプル。
●1stは「一体感」「ケミストリー」。
2ndは「船頭多くして船山に登る」「全方位型」「自由奔放」「バリエーション」。
3rdは「リーダーが仕切るトップダウンシステム」=「一体感もケミストリーもないが、明確な軸(アクセルの趣味)はたしかにある」。