泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『君は人のために死ねるか』/杉良太郎

杉さまの流し目をナメてはいけない。それは単におひねり片手の女性ファンを虜にするだけの小道具などでは断じてない。それは相手を傷つける武器ではなく、鋭くはあるが常に圧倒的やさしさを内包する。

君は人のために死ねるか」とは、あまりにまっすぐで鋭利すぎる問いだが、その中身は殉職した同僚への思いやりに溢れた鎮魂歌。だが杉はもちろん、温かいと同時にいつも鋭い。極度に掴まえづらい語りのテンポと、悪趣味スレスレの変拍子によるスリリングな曲展開は、他の誰にも歌えぬ杉だけの歌を成立させている。カラオケで試そうものなら、あまりにプログレッシヴな展開にすぐさま自分の現在地を見失い、確実に大怪我をする地雷曲。

しかし驚くべきことに、付属DVDに収録されたライヴ映像において、杉は苦もなく、むしろさらに流麗にこの難曲を征服してみせる。熱いメッセージを白スーツでさらりと歌い上げるその姿に、クールでありながら粘着力のある流し目の本質を見る。

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