泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『LOW RIDER』/NO FUN AT ALL 『ロー・ライダー』/ノー・ファン・アット・オール

完全に期待通りの方向性で来た復帰作。まったくブレがなくメロコア一直線の潔さ。外枠は完璧だ。しかし肝心のメロディが弱い。どうにも扇情力が足りない。

再結成前の作『STATE OF FLOW』におけるスピード・ダウンが、まさにバンド自体の失速を体現するかのごとくであったため、全盛期のスピード一辺倒で復活してきたのは一聴して頼もしく聞こえる。

パッと通して聴いた印象では、彼らの最高傑作『THE BIG KNOCKOVER』に近い、パンク系にしてはボトムのしっかりした音像に、かなりの手応えを感じる。だが聴き終えてみると印象に残るフレーズがほとんどなく、そんな中で辛うじて記憶に残っているのは、過去作の焼き直しや手グセ的フレーズばかりだったりする。彼らならばこれくらいは片手でもできるはずだと、ファンはみな知っている。

そもそもメロコアというジャンル自体が、かなり狭い範囲のメロディとスピードで展開されてゆくタイプの音楽であるため、いつだってマンネリズムは避けがたい問題として横たわっているのだが、だからこそ精度は重要になってくる。新鮮味や多彩さよりも精度を選び取った結果として、メロコアはジャンルとしてファンの信頼を勝ち取ってきたのだし、その楽曲選択肢の狭さこそが、音楽のクオリティを保証してきたとも言えるのだ。

だからもちろん無闇な冒険など彼らには求めないし、似た曲が多いことに今さら文句を言うのも違う。だけどこれまで以上に焼き直しフレーズが多いと感じるのもまた事実で、しかし実のところそれは、単にフレーズが魅力的でないからそれ以外の感想が出てこない、というケースが多い。本作からは、まるごとそういう印象を受ける。どこか「やっつけ仕事」というか、「期待に応えてみました」というような、受け身な制作過程が透けて見えるというか。どことなくモチベーションの低さを感じてしまう。

だがそれもこれも、楽曲が良ければ思い浮かばない文句である。やはりアーティストは、楽曲の力で聴き手をねじ伏せるしかないということだ。とりあえずはまだリハビリ期間中だと解釈し、まずは全盛時の音像が復活したことを喜びつつ、次作での再起に期待したい。改めて続けることの意義深さ、BAD RELIGIONの偉大さを思い知らされる。

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