泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『H.E.A.T』/H.E.A.T 『ヒート』/ヒート

北欧ハード・ポップの新星と聞いて、過剰な期待は禁物だ。全体的にすごく惜しい。

たしかにメロディアスな部分は多々あるが、全体に思いのほかアメリカン。単調なギターリフと工夫のないリズム、声質はジョーイ・テンペストなのに力みすぎて結構ラフなヴォーカルがその主な原因である。だがこのアメリカンな感触は、哀愁よりも情熱を感じさせるバンド名から考えればむしろ自然と言えるかもしれない。同郷のEUROPEやTREATというよりは、アメリカのHURRICANEあたりに近い。

所々光るメロディはあるのだが、それを最大限に生かしきれていない印象。良質なメロディを上手く演出できていないというか、どの曲もいまいち盛り上がりきらないまま終わる。コンスタントに平均点を越えてはくるのだが、多少なりとも工夫というか意外性が欲しい。そこらへんは、マーティ・フレデリクセンあたりの優秀なソングライターに手を借りる必要があるかもしれない。あるいはここにジョージ・リンチやジョン・ノーラムのギターリフがあれば、という気もする。それだとすっかりDOKKENだが。

TREATやMASQUERADEあたりと比べても、明らかにギターリフに工夫が足りない。全体に歌メロに頼りすぎている感があり、その割には雑な歌い方が歌メロを損なってしまっている。メロディ自体は悪くないのに勿体ない。全体的に勿体ない箇所が多いアルバムである。曲名を見れば一発でわかる歌詞の安っぽさも、なんだか勿体ない。素材は悪くないのに、微妙にお洒落にも悪くもなりきれないファッションも、勿体ない。結局すべてがB級な感覚に貫かれている。しかしB級になりきれてもいないところが、これまた勿体ないのだが。

つまりこれは、DISK HEAVENあたりで掘り出し物として出会うべき一枚。比較対象としてはEUROPEやTREATではなく、DA VINCIやRETURNあたりが適当だろう。前評判に期待しつつ国内盤で買うのはちと荷が重い。あくまでB級であることを踏まえれば、それなりには楽しめる一枚。

もっと北欧っぽく陰りを強め思いっきりイモ臭くなるか、アメリカから優秀なプロデューサーを迎えて一気にあか抜けるか。ことメロディ面においては、どちらでも行けるだけのポテンシャルを備えてはいるので、次作では中途半端ではなく明確な方向づけを期待したい。

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