泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

えのき・どいちろう? えの・きどいちろう?

えのきどいちろうはどれくらい有名なのだろう?

だいぶ前に買っておいたままになっていた、えのきどいちろうの『妙な塩梅』というエッセイ集を引っ張りだして読んでみたら、これがものすごく面白くて感動している。なぜ今までちゃんと読まなかったのか?

大学時代、文化放送の『えのきどいちろう意気揚々』というラジオ番組を良く聴いていて、それが面白かったので買った本だと思う。もちろん彼の本職はコラムニストだが、今もTBSラジオの『アクセス』でパーソナリティーを務めている彼の喋りを聴くと、やはり話の面白い人は信頼できるなと思う。

以前中原昌也が「エッセイの面白い小説家は信頼できる」とどこかで言っていて、妙に納得した覚えがあるが、それと同等に「喋りの面白いコラムニスト」も信頼できると思う。

ところでこの『妙な塩梅』を読んでいる最中、僕はずっと「この人のとぼけ具合は内田百間から土屋教授へとつながる系譜だな」と感じながら読んでいたのだが、そう思った途端、著者が電車の中で内田百間の本を読んでいる描写が出てきて、なんだか嬉しかった。ルーツがまる見えになるとがっかりすることもあるけれど、照れずに開陳してくれるとむしろ信頼感につながって良い。

しかし慌ててAmazonで他のえのきど本を買い漁ろうとしたところ、軒並み絶版でちょと驚いた。たしかに彼の微妙な知名度(みうらじゅんリリー・フランキーに比べて)からすると妥当なのかもしれないが、この面白さからすると明らかに不当な評価しか得られていないことに歯痒い思いがする。

とはいえかくいう自分も、彼の喋りを好きではあっても、文章に関してはこれまで正当な評価を与えてこなかったわけで、世の中の鈍感さ、気づきにくさを攻める内には当然僕自身も入ってくる。どころか、絶版に荷担したような後ろめたささえある。

やはり正当な評価なくしては、良いものが売れる良い世の中は来ないのだな、とつくづく思う。もしかしたら良いものを書く人よりも、良いものをちゃんと評価できる人が少なくなっているのかもしれないなと、そんなことを考えた。

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