確かにデスでありスラッシュであるが、これほどまでにメロディアスな音楽は全ジャンルを通じて他にないと断言したくなる泣きの名盤。
ARCH ENEMYのアモット弟ことクリストファー・アモットのギターが繰り出す哀愁のフレージング・センスは、全盛期のマイケル・シェンカーをイングヴェイ以降の技術で再現した奇跡のクオリティ。
ヘヴィーな音像の中でひときわ異彩を放つアコースティックなインスト“Funeral In Space”は、遊び疲れた子供が夕焼けの墓場でひとり泣いているような懐かしい寂しさに襲われる名曲。アルバム後半の弱さが聴後感をぼんやりさせるが、前半の強力さがそれを補って余りある。
本家ARCH ENEMYに比べ過小評価にもほどがあり、それゆえか2ndでは普通の様式美HMに、3rdではブリティッシュHRへとコロコロ方向性を変え、いずれも質は高かったものの、いつの間にやら自然消滅。兄の出来が良すぎて報われぬ弟の典型だが、本作から兄・マイケル以上のポテンシャルを感じ取る向きも少なくないだろう。