正直ここまでやってくれるとは思わなかった。
たしかに前作で明確に化けた手応えはあったが、それはあくまでもアルバムの頭数曲の印象であって、後半流している感じは否めなかった。しかし今作は尻尾まできっちりあんこが詰まっている。もはやメタルコアの先頭を走るのは彼らで間違いない。
これまでどうにも定まらなかった「メタルコア」という複合的ジャンルの行く先を、「メロディック・デスメタル」と「スラッシュ・メタル」の中間地点に位置づける方向性。つまりどっちにしろメタル地図の中での話であって、それすなわちハードコア領域との決別を意味するのだが、このレベルの旋律美を持ってすればもはやハードコア由来のワンパターンなリズムチェンジなど不要だろう。そんな表面的な緩急操作による緊張感の演出などなくとも、質の高いメロディの連射で十二分に攻撃可能だ。
全体の印象はTESTAMENTあたりのベイエリア・スラッシュ勢に近いが、メロディの質感は最近のIN FLAMESあたりが目指す「北欧メロデスがモダンなアメリカン・ヘヴィ・ロックに接近した」ときの感触を思い起こさせる。そこらへんの、オールドスクールでありながら今様な全体像は、現在進行形のバンドとしては不可欠なスタンスであり、だからこそ頼もしい。
ハードコア・サイドのファンには酷な内容かもしれないが、メタルコアの地平を切り拓く理想的一例であることには疑いの余地がない名盤。