泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

影響ラビリンス〜VOW WOW成分分析不可能説〜

創作だのクリエイティブだの言っても誰しもが先人の影響を受けている、というのは今さら言うまでもない事実だが、ときどきどこまで遡って調べてもそのルーツが思い当たらないアーティストというのがいる。

たとえば村上春樹の文体がレイモンド・チャンドラーレイモンド・カーヴァーアメリカ文学の翻訳文体から直結しているとか、B'zの楽曲の原材料がエアロスミスと何と何なのかとか、そういうのは非常にわかりやすくできている。

良い悪いは別にして、原典をあたるという調査行為がなぜか人を安心させる。そしてその先へと趣味を広げていく際にも、ルーツが見えやすいというのは助かるものだ。

だけどときどきその出所というかスタート地点がまったく見えないアーティストがいて、そういう人や作品に出会うと僕は混乱するというか非常に困る。
何だか証拠不十分の犯罪というか、すっかり迷宮入りな気分になる。
もし何もないところからいろいろ作れたらその人は神である。
しかしその人が人であって神ではないことを僕は知っている。

だから不安になるのだが、ここでありうる選択肢は二つ。
一つは「あまりに多方面から多彩な影響を受けているため、複雑に混じり合い融け合って原型がわからない」という説。
もう一つは、「本当に誰からも影響を受けていない」という説。

しかし後者はもう解決のしようがないので考えぬことにする。
アーティストが神でなく人であるという前提でいく。

となると前者の「多方面影響説」でいくしかないのだが、この場合、遠くのジャンルから引っぱってきたほうが影響がわかりにくいとされる。
だから新作でわざわざロックにジャズを導入したり、映画監督が「私は一切映画を観ない。バッハの音楽から影響を受けて撮った」などと言ってみたりする。

それはそれで説得力があれば良いのだが、たいがいはちんぷんかんぷんでロクな説明にはならない。
「家ではジャズしか聴かないよ」というロックミュージシャンはやっぱり信用できないのだ。
ならジャズやれよ。

そういうのはたいがいが見栄によるポーズで、そういう奴ほどかなり近いところからパクった上に、遠くからの影響を申し訳程度にトッピングしていたりするから、むしろルーツは見えやすくて困らない。

そうではなく本当にわからなくて気になるのは、ちゃんと近いジャンルからの影響を受けているはずなのに、やっぱりルーツが明確に見えてこないアーティスト。

で、そのひとつがVOW WOWである。
かつて英国進出を果たした数少ない日本のハード・ロックバンドだが、どうもハッキリとした影響の出所がいまだにわからなくて困る。
間違いなくブリティッシュ・ハード・ロックからの影響がある、という程度の大雑把な括りはもちろんできるのだが、「この曲はあのバンドっぽいな」とか、「このフレーズはあのバンドのあの部分の変奏だ」とかいうレベルではまったく見えてこないのだ。

日本のハード・ロックヘヴィ・メタルバンドはとかく海外からの影響をモロに出してしまいがちだが、彼らはそういう意味でまったく日本のバンドらしくない。

もちろん人見元基の日本人離れした声量と英詞発音と歌唱力に負うところもあるが、音楽自体の出自が他の日本製ロックバンドとは決定的に違うような気がするし、海外バンドを含めても類似バンドを探すのが非常に難しい。
僕はVOW WOWの音楽が大好きなのだが、こういうのを他にも聴きたいと探し続けてもやっぱりずっと見つからないのだ。

それはもちろんワン&オンリーであり素晴らしいということの証明でもあるのだが、趣味を掘り下げていきたい聴き手側にとって、そこが行き止まりでは甚だ困るのです。


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