泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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あの嘘だらけの素晴らしいレディオが終わる2

三年半続いた『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』が今月いっぱいで終わる。

またひとつ、オールナイトニッポンからお笑い番組が消える。
いつからか、ラジオにおけるお笑いの流れは、ニッポン放送からTBSラジオにシフトしてきた。おそらくは伊集院光が移籍して成功を収めたことがきっかけになったように思うが、この両局のスタンスの違いはもはや明白だ。

今やオールナイトニッポンは、すっかりミュージシャンや俳優の枠になってしまった。ミュージシャンの歌を聴く番組ではない、ミュージシャンの喋りを聴く番組である。歌うこともあるだろうが、メインは当然喋りだ。もちろん俳優の演技を聴く番組でもない。喋りが芸人より面白いミュージシャンもたしかにいる。たとえば古くはビニ本仙人の谷村新司

しかし今のラインナップに、そのレベルの喋りを持つミュージシャンや俳優はいない。ニッポン放送は、彼らの喋りが欲しいわけではなく、彼らのファンが欲しいのだ。固定ファンを引き連れてきてくれる人を番組に起用する。これ以上チープで確実な戦略があるだろうか。しかし不況というのは人を確実な方向に向かわせる。安定志向バンザイ。無駄な冒険などする余裕はない。そうやってエンターテイメントは堕落してゆく。

喋りの力で人を惹きつける人間を起用しないラジオに何の意味があるのか? ただファンの多いキャラを起用するという方法は、ラジオの長所を積極的に放棄することを意味する。もしニッポン放送が以前からそのようなやり方をしていたとしたら、黎明期のタモリや売れない落語家の伊集院光を起用することなど絶対にありえなかったはずだ。

そしてニッポン放送は、数年前からいつの間にか聴取率一位の座をTBSラジオに奪われている。
ここで喋りの力を再び信じ、取り戻さなければ、ニッポン放送はさらに負けが込むことになるだろう。『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』終了という事実は、状況のさらなる悪化を意味することになるはずだ。

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