泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

短篇小説「勇者・二度見村ミム彦の誤解」

勇者・二度見村ミム彦はいわゆる「二度見」の天才であった。彼はあらゆるものを二度見る。そして一度見た段階では確実に見間違えるが、再び同じものが視野に入ればその対象を正確に把握することができる。めでたく二十歳の誕生日を迎えたその日、ミム彦は初…

似合わせなカット

近ごろ髪切り場の看板黒板そしてネット上でやたらと目撃するようになった謎のメニューがある。「似合わせカット ¥6,480」なんということでしょう。なんだかわからないが、このメニュー名からは「言葉の圧」のようなものが強烈に発散されている。「似合わせ…

カールの乱、ポテチの変

日本はついに、カールとポテチのない未曾有の時代へと突入した。正確にいえば完全にないわけではないが西日本限定になったり品薄だったりで、まあ大雑把にいえば「ない」というか「入手困難な状況が継続、あるいはわりと頻繁に起こり得る」という時代になっ…

連載小説「二言武士」/第五言:過言はあれど二言なし

「実はワシ、このジム畳もうと思ってるんだよね」オールドジムの支配人である「過言武士」こと過田減迫が、市中引き回されマシンに絶賛振り回され中の覆之介の耳に遠慮なく相談を投げかける。「なんかほら、毎日マッチョばっかり見てるの耐えらんなくて」い…

短篇小説「河童の一日 其ノ十三」

近ごろなんだか調子が出ない。どはいえ調子が出たところでたいしたことはない。それは僕が河童だからなんじゃないか。ついついそんな後ろ向きなことばかり考えてしまうのは、たぶんこの気候のせいだ。寒いようで暑い、暑いようで寒い。河童はそんな思わせぶ…

現在企画頓挫中の新書タイトル一覧

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』あたりからだろうか。最近の新書はとにかく「タイトルありき」の羊頭狗肉が横行しているとの評判である。ならばまずタイトルから決めてしまうのが良いのではないか、と思いタイトルから決めたところ、結構思いつくには思…

短篇小説「雨のドラゲナイ」

竜治は雨が降るとドラゲナイ気持ちになる。とはいえ竜治は一介の会社員。今朝も満員電車にドラゲナイしなければならない。二度寝が深まりすぎないうちに一大決心をして掛け布団を勢いよくドラゲナイした竜治は、トイレで用を、洗面所で顔をそれぞれドラゲナ…

絶対に出ない国語現代文入試問題

【問1】 傍線部(ア)でクワマンが3度目の盗難に遭ったときの気持ちを、20字以内で答えなさい。【問2】 傍線部(イ)で指摘されている細川たかしの髪型を表現するのに、最適な四字熟語を以下の選択肢から選びなさい。 A. 猪突猛進 B. 七転八倒 C. 百花繚乱 D…

短篇小説「死ぬのは面倒」

喪之彦は樹海の中にいた。人生に絶望した男は、ひっそりと自ら首をくくるための死に場所を探し歩いていた。とにかく丈夫な木を探す必要があったが、そんなものは樹海にはいくらでもあった。喪之彦は幹だけでなく枝まで太く頑丈な木を選ぶと、さっそくそこに…

ポテトチップスが品薄になると、世界はどうなってしまうの?

大変なことになった。ニュースによると、あの国民的食品が危機的状況にあるらしい。大変なことになった。大切なことなので二度言った。headlines.yahoo.co.jpどうやら原因は、昨年北海道を襲った台風の被害によるじゃがいも不足らしい。「なんだ、たかがポテ…

短篇小説「森の覇者アラクレシスの三択」

森の覇者アラクレシスは覇者と呼ばれるくらいだから喧嘩は抜群に強かったが、ジャンケンがすこぶる弱かった。アラクレシスの生涯ジャンケン戦績は「400戦無勝」であったと言われている。そして彼の人生における重大な岐路には、必ずジャンケンが壁となって立…

短篇小説「いい意味で唯々男」

飯田唯々男はいい意味でいい加減な男だった。唯々男はいつもいいスーツをいい具合に着崩していたが、そのラフさが彼をいい意味でいい人に見せていた。そのうえ唯々男は近ごろいい感じに太ってきているため、勢いよく息を吸い込んでスーツのボタンを留めると…

レトロで新しく、ダサくてお洒落、そして激しくも美しい謎の幽霊バンド「GHOST」がとにかく素晴らしい

魅力的なものというのは、時に「二律背反」の要素を兼ね備えているものだが、このスウェーデンのメタルバンドGHOSTほどその両極が入り交じることで魅力を生み出しているアーティストも珍しい。実は2016年、個人的に最も衝撃を受けたのが、以下に挙げるこの「…

短篇小説「天天天職」

どんな仕事にもその職務内で発揮される「才能」というものがあり、逆にいえば人にはその「才能」を生かす「天職」というものがあるらしい。「才能」というのはけっして、スポーツ選手や芸術家にのみ求められるものではない。映画チケットのもぎりにすら「才…

短篇小説「もはやがばわないばあちゃん」

がばいばあちゃんが思ったほどがばわなくなったのはいつの日からだろうか。がばいばあちゃんは、とにかくいつでも誰にでもがばうばあちゃんだった。イケメンにも不細工にも分けへだてなくがばうし、いったんがばうと決めたら老若男女も国籍も問わない。西に…

書評『騎士団長殺し』/村上春樹 ~ダイソン的吸引力で読者を物語へと引き込む「ほのめかし文学」~

本と人との関係というのは人間同士の関係と同じで、趣味嗜好は合わなくても友達や恋人になれるというケースが少なからずある。僕にとって村上春樹の作品とは、常にそういう存在であるのかもしれない。この『騎士団長殺し』という作品をいま読み終えて、改め…

短篇小説「河童の一日 其ノ十二」

河童にだってお洒落は必要だ。でもお洒落にはリスクがつきもので。学校から帰ると、茨城から流れて来た爺ちゃんが居間で甲羅を磨いていた。人間だと乾布摩擦というのかもしれないが、フォームは同じでもやっていることの意味は全然違う。ボーリングとスカー…

短篇小説「号泣家」

私は奇妙なことに、泣きながら産まれてきたのだとのちに母親から聞かされた。私がそんな奇抜なスタイルで産まれてきたのは、きっと両親が泣きながら出逢ったからだ。産まれてこのかた、私はずっと泣いている。何をするときも確実に泣いている。飯を食うとき…

短篇小説「最後の勇者」

王様に呼び出されるというのは、つまり職員室に呼び出されるようなもので、だいたい叱られるものと相場が決まっている。しかしこの日は違った。城の大広間にでんと鎮座している王様の前に跪くと、王様は僕の手を取り神妙な顔を作り込んで言った。「よくぞ参…

連載小説「二言武士」/第四言:市中引き回されマシン

なんといっても武士は体が資本である。さしあたっての得物である「バールのようなもの」の圧倒的魅力により六人の岡っ引きをまんまと丸め込み、自らの器物損壊罪をもみ消すことに成功した覆之介は、家に帰る前に会員制スポーツジムで汗を流すことにした。近…

青い鳥に乗ってクリムゾンキングの宮殿に降り立つケンドーコバヤシを見た(ただし幻覚)

いま僕の中で巻き起こっている3大ブームは、『キング・クリムゾン』『ケンドーコバヤシのテメオコ』『青い鳥』の3つである。最初のひとつのみ、はからずも「ジョン・ウェットンの死」という哀しいニュースと若干リンクしてしまったが、これらは基本的に世の…

短篇小説「私が全自動になっても」

何もかもが全自動化されたこの世界で、自動でないのはもはや人間の心だけだ。もちろんこの文章も全自動で書いている。いや書かせている。むしろ書かれている。その証拠はいずれ表れることになるだろう。水道の蛇口が自動水栓になった際にも驚いたものだが、…

ゆとり鬼逃走中

ここ数日、節分から逃げてきた鬼たちがわが家に続々と駆け込んでいる。もちろん、うちに豆シェルターを完備しているからである。毎年のことではあるのだが、今年はちょっと数が多いような気もする。やはりゆとり教育のせいで、豆に弱い鬼が増えているのだろ…

ルパンに奪われしものたち シーズン3

ルパンはこれまで、世界中の人々からさまざまな物を奪ってきた。いや、奪われたのは物だけではない。心や概念までも。これはルパンの最新版盗難記録である。 銭形「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたのモスキート音です」(ジャパネット…

短篇小説「忘却無人」

ポストにちらしが入っていたのがすべてのはじまりだった。ちらしといっても広告ではなくちらし寿司である。ポストかと思ったものはホストで、要はホストが家の前でちらし寿司を食っていたのである。いや食っていたのではなく、繰っていたのかもしれない。と…

短篇小説「かもしれない刑事」

「こいつが犯人かもしれないし、あいつが犯人かもしれない。犯人かもしれなくない奴なんて、この地球上には誰ひとりいないのかもしれない」かもしれない刑事は、あらゆる可能性を信じる男だ。彼にとって確率の高低は意味をなさない。1%も99%も、「可能性が…

書評『アーセン・ヴェンゲル アーセナルの真実』/ジョン・クロス著 岩崎晋也訳

アーセン・ヴェンゲル ―アーセナルの真実―作者: ジョン・クロス,岩崎晋也出版社/メーカー: 東洋館出版社発売日: 2016/10/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見るまるで司馬遼太郎の長篇歴史小説を読破したような、重厚な読後感に包まれている。軽い気…

気まぐれ無免許シェフの人名調理法

この世に変わらないものなどない。それは言語に関しても同様で、昨今の若者言葉に代表されるように、言葉もまた様々に姿を変えることで今日まで生き延びてきた。そうでなくとも、そもそも動詞には活用形というものがあって、使われる状況によって語尾が頻繁…

終わりなき里山戦争

このたび日本人力士の稀勢の里が、第72代横綱に昇進した。この事実をもって、長年に渡り日本を二分している「里山戦争」は、一気に「里」派が勢いを盛り返すことになるかもしれない。「里山戦争」とは、言うまでもなく「たけのこの里」派対「きのこの山」派…

プログレ食わず嫌いの眠れる狂気を目覚めさせ、整えるための厳選10曲

選曲テーマは、「狂気と整合性の両立、あるいはせめぎ合い」。ジャンル的にはプログレ外のものも含む。聴けば世界観の広がる10曲。 【Song/ARTIST/ALBUM/Time】①「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」/YES/『TIME AND A WORD』/4:50映画…

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