泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

連載小説「二言武士」/第四言:市中引き回されマシン

なんといっても武士は体が資本である。さしあたっての得物である「バールのようなもの」の圧倒的魅力により六人の岡っ引きをまんまと丸め込み、自らの器物損壊罪をもみ消すことに成功した覆之介は、家に帰る前に会員制スポーツジムで汗を流すことにした。近…

青い鳥に乗ってクリムゾンキングの宮殿に降り立つケンドーコバヤシを見た(ただし幻覚)

いま僕の中で巻き起こっている3大ブームは、『キング・クリムゾン』『ケンドーコバヤシのテメオコ』『青い鳥』の3つである。最初のひとつのみ、はからずも「ジョン・ウェットンの死」という哀しいニュースと若干リンクしてしまったが、これらは基本的に世の…

短篇小説「私が全自動になっても」

何もかもが全自動化されたこの世界で、自動でないのはもはや人間の心だけだ。もちろんこの文章も全自動で書いている。いや書かせている。むしろ書かれている。その証拠はいずれ表れることになるだろう。水道の蛇口が自動水栓になった際にも驚いたものだが、…

ゆとり鬼逃走中

ここ数日、節分から逃げてきた鬼たちがわが家に続々と駆け込んでいる。もちろん、うちに豆シェルターを完備しているからである。毎年のことではあるのだが、今年はちょっと数が多いような気もする。やはりゆとり教育のせいで、豆に弱い鬼が増えているのだろ…

ルパンに奪われしものたち シーズン3

ルパンはこれまで、世界中の人々からさまざまな物を奪ってきた。いや、奪われたのは物だけではない。心や概念までも。これはルパンの最新版盗難記録である。 銭形「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたのモスキート音です」(ジャパネット…

短篇小説「忘却無人」

ポストにちらしが入っていたのがすべてのはじまりだった。ちらしといっても広告ではなくちらし寿司である。ポストかと思ったものはホストで、要はホストが家の前でちらし寿司を食っていたのである。いや食っていたのではなく、繰っていたのかもしれない。と…

短篇小説「かもしれない刑事」

「こいつが犯人かもしれないし、あいつが犯人かもしれない。犯人かもしれなくない奴なんて、この地球上には誰ひとりいないのかもしれない」かもしれない刑事は、あらゆる可能性を信じる男だ。彼にとって確率の高低は意味をなさない。1%も99%も、「可能性が…

書評『アーセン・ヴェンゲル アーセナルの真実』/ジョン・クロス著 岩崎晋也訳

アーセン・ヴェンゲル ―アーセナルの真実―作者: ジョン・クロス,岩崎晋也出版社/メーカー: 東洋館出版社発売日: 2016/10/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見るまるで司馬遼太郎の長篇歴史小説を読破したような、重厚な読後感に包まれている。軽い気…

気まぐれ無免許シェフの人名調理法

この世に変わらないものなどない。それは言語に関しても同様で、昨今の若者言葉に代表されるように、言葉もまた様々に姿を変えることで今日まで生き延びてきた。そうでなくとも、そもそも動詞には活用形というものがあって、使われる状況によって語尾が頻繁…

終わりなき里山戦争

このたび日本人力士の稀勢の里が、第72代横綱に昇進した。この事実をもって、長年に渡り日本を二分している「里山戦争」は、一気に「里」派が勢いを盛り返すことになるかもしれない。「里山戦争」とは、言うまでもなく「たけのこの里」派対「きのこの山」派…

プログレ食わず嫌いの眠れる狂気を目覚めさせ、整えるための厳選10曲

選曲テーマは、「狂気と整合性の両立、あるいはせめぎ合い」。ジャンル的にはプログレ外のものも含む。聴けば世界観の広がる10曲。 【Song/ARTIST/ALBUM/Time】①「No Opportunity Necessary, No Experience Needed」/YES/『TIME AND A WORD』/4:50映画…

トランプ米大統領爆誕により、世界はどうなってしまうのか~「風桶」方式で検証する~

いよいよ「暴言王」ことトランプ米大統領が誕生した。それにより、このさき世の中がどうなってしまうのか、世界中が不安に駆られている。しかしこと政治経済に関しては、どのような原因からどのような結果が生まれるのか、因果関係を予測することが難しい。…

短篇小説「冬将軍と鍋奉行」

東京に初雪の降った夜、鍋奉行は家で冬将軍を待っていた。冬将軍と鍋奉行はSNSで出会った。なのでこの日が初対面となるはずだった。鍋奉行はまずは得意の鍋によるおもてなしで、冬将軍の心を溶かそうと考えていた。しかし冬将軍は各地の雪軍曹に雪を降らす指…

明智、天下布武やめるってよ

特に耳を傾けていなくとも、おのずと耳に入ってきてしまう会話というのがあって。寒波、寒波と日本中が騒いでいたきのう日曜日の夕方、近所にあるスーパーとコンビニエンスの中間くらいのマーケット。レジを済ませて自動ドアを出るところで、ちょうど入って…

連載小説「二言武士」/第三言:一心同体岡っ引きシックス

似たような物品を所持している者同士というのは、何かと親近感の湧くものである。「御用だ! 御用だ御用だ!」器物損壊の容疑をかけられた覆之介を取り囲んだ六人の岡っ引きたちはそれぞれ、胸の高さに十手を構えていた。それに対し覆之介も、現時点における…

日本十大あけましておめでとうございます2017

あけましておめでとうございます(年末貼り替えたばかりの障子に穴を)。あけましておめでとうございます(上司が入っているトイレットのドアを)。あけましておめでとうございます(ぼったくりバーの扉を)。あけましておめでとうございます(サンタクロー…

連載小説「二言武士」/第二言:シェフの気まぐれ団子

刀剣ショップにて注文購入した刀を即座に「バールのようなもの」へと交換してもらい、その「バールのようなもの」でそこらじゅうの水道を破壊し尽くした挙げ句、やっぱり飽きたのでまた刀と替えてもらった覆之介は、結局その刀が気に入らずまたもや刀剣ショ…

連載小説「二言武士」/第一言:バールのようなもの

「武士に二言はない」とよく言われるが覆之介は二言あるタイプの武士だった。覆之介は今日、刀剣ショップへ注文しておいた刀を受け取りにいった。しかし実物を見てみたらその刀はカタログの写真と全然違って、なんかフォルムが思ったほどじゃなかったので、…

サンタクロース目撃情報

今年も12月24日から25日にかけて、日本各地でサンタクロースが目撃されている。ここにその目撃情報をまとめてみたい。言うまでもなくすべてれっきとした、由緒なき、正真正銘の幻影である。 34歳・主婦「トナカイは大量にリストラされたらしくて、大きな荷台…

短篇小説「河童の一日 其ノ十一」

今年の河童新語流行語大賞が「河童、皿割れるってよ」に決定した。今さら感が凄いけど、間違ってはいない。それに便乗して「ワレモノ注意!」のステッカーを河原で売り出す輩がさっそく登場したが、そんなもの恥ずかしくて頭に貼れるはずがない。通気性の問…

短篇小説「眠れる盛り土美女」

ある真夜中、床下からザクザクと不穏な音がするのを僕は聴いたのだった。トイレに起きた僕はたしかにその音と振動を感じたが、家の前をトラックか何かが通ったのだろうと思い、その日は用を足すとそのまま寝てしまった。平屋建てアパートの一階は、何かとよ…

なんでも王選手

「マイナンバーを送れという旨の書類が来たのですが、マイナンバーの通知書が見つからないので、代わりに王選手の背番号を書いて送れば良いですか?」「素敵な女性に電話番号を尋ねたら、王選手の背番号と同じだと言われたのですが、イチかバチか掛けてみる…

【2016年】年間ベスト・アルバム10選(ハード・ロック/ヘヴィ・メタル)

1位『SORCERESS』/OPETH SORCERESS-DIGIPAKアーティスト: OPETH出版社/メーカー: NUCLE発売日: 2016/09/30メディア: CDこの商品を含むブログを見るプログレッシヴ・ロックが追い求めてきたものは、難解さ、複雑さ、高度な技術などではなく、その先にある美…

新語・流行語年間大賞語「神ってる」が物足りないので様々にカミらせてみる

『新語・流行語大賞2016』の年間大賞語に選ばれた「神ってる」という言葉。受賞の勢いに乗ってメディアだけでなく政治家までもがこぞって使い出しているが、これがどうにも物足りない。そう感じるのは、そもそも意味的には「神懸かってる」という既存の言葉…

短篇小説「万物ファースト社会」

果物ファーストの八百屋と珈琲ファーストの喫茶店とパーマネントファーストの美容院がショップファーストの商店街に並んでいる。いつの間にやら、この世はすっかりファーストまみれになってしまった。果物ファーストの八百屋で野菜を買うともちろん店主に怒…

今さら『君の名は』あらすじ脳内諸説~信じるか信じないかは自分のさじ加減です~

大ヒット映画『君の名は』をいまだ観ていない僕の脳内で、そのあらすじに関する諸説がいくつか浮かび上がり、情報が錯綜している。あらすじを想像する手がかりは、「入れ替わり」「タイムリープ」「ラブストーリー」の三点のみ。ここにその諸説をまとめ、特…

最近聴読作品所感~穏やかに見えて先鋭~

近ごろ読んだもの聴いたもの何かしらの引っかかりがあったもの。 【小説】★『ある完璧な一日』/マルタン・パージュ ある完璧な一日作者: マルタン・パージュ,河村真紀子出版社/メーカー: 近代文藝社発売日: 2016/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ…

短篇小説「河童の一日 其ノ十」

河童は冬が苦手だ。というと「いつも裸で寒いから」と思われがちだが、そこは慣れでなんとかなる。近年ではヒートテックの甲羅も、すっかり普及してきたし。だから本当の問題は乾燥のほうだ。河童は乾くと急激に弱体化する生物である。特に頭部に載っかった…

我が憧れの「ナッツ・リターン」~『新語流行語大賞2016』発表を待たずに~

本日17時、今年の新語流行語大賞が決まるらしい。だがそんなことはどうでもいい。今年も勝手に恒例にしている「新語流行語大賞全部入り小説」を書きながら、「なんで『ナッツ・リターン』が入ってないんだ!」と憤っていたことを思い出したからだ。しかし調…

短篇小説「柿食えば鐘鳴る機」

「こないだ寺で柿食ってたらさ、ちょうど鐘が鳴ったんだよね」政尾加志貴(まさお・かしき)が自慢の横顔を見せつけながら得意気にそう言うと、友人らは「ま、そういうことってあるよね」と軽く受け流したので、加志貴は意地になって、「……てゆうことが今年…

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