泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

短篇小説

短篇小説「河童の一日 其ノ四」

「河童も恋をするの?」という質問を近ごろよく受ける。芸能人が立て続けに結婚を発表しているせいだろうか。YES,もちろん河童だって恋をする。カラオケに行けば、渡辺美里の「恋したっていいじゃない」も歌う。「MAJIでKOIする5秒前」は歌ったことがない。…

短篇小説「河童の一日 其ノ三」

僕ら河童は漢字で書くと「河」の「童」ということにいつの間にかなっているが、これも河童がこうむっている風評被害のひとつである。河童だからといって、もちろん「童=子供」ばかりなんてはずはなく、河童にもジジイやババアはいる。最近はむしろそっちの…

短篇小説「河童の一日 其ノ二」

今日は人間の友達の家へ遊びに行った。彼の家へ行くのは初めてだった。家にあがるやいなや、人間の女にすこぶる嫌な顔をされた。友達の母親らしかった。一瞬にして花柄のスリッパをビショビショにしてしまったからだと思う。河童なのだから当然だ。河童を家…

短篇小説「河童の一日 其ノ一」

朝起きたらヘッドソーサーにうっすらカビが生えていて抜群に哀しかった。テレビのニュースであまりに熱中症熱中症言うものだから、警戒しすぎて寝る前に皿を経口補水液で濡らしすぎたせいだ。CMで所さんにまで言われたら濡らすしかない。あの人熱中症でいく…

悪戯短篇小説「非売品未体験レポーター吹子」

いえいえほんと、飲むだけで痩せるなんて、これっぽっちも思ってなかったんです。だって普通思いませんよね、1日にたった30キロ走って、サウナで2時間まんじりともせず、この水(編集部註:『フレッシュスリムポイズンウォーター』)をくぴっと3リットル弱飲…

悪戯短篇小説「文字通り」

ここは県内きっての目抜き通り、その名も「文字通り」。文字通りというからには、その名の通り文字通りの店が並ぶ。看板に偽りなしとはまさにこのことである。駅を出て、「文字通り」と書かれたアーチを抜けたすぐ右手にあるのは、「靴屋」という看板の掲げ…

悪戯短篇小説「あくまで死にたい小田島」

誰にも似てない田之倉が、高校時代からの友人である気持ちで負けない岡島との待ち合わせ場所であるいつもの喫茶店に到着すると、気持ちで負けない岡島の横に仏頂面の見知らぬ男が座っていた。気持ちで負けない岡島は、注文を取りに来た店員にお冷やを豪快に…

悪戯短篇小説「故事らせ恋物語」

恋のはじまりは目薬だった。煎じて飲むための爪垢収集にしばし熱中していた故彦(ゆえひこ)は、その細かな作業のせいで七度転んだり八回転げたりするほどではない疲れをその目の奥にじんわりと感じたので、目薬を注すことにした。思いがけず降り続けること…

悪戯短篇小説「新語流行語全部入り小説2014」

もはや昼間っから暇を持てあましたタモロスのマイルドヤンキーと、地方議員のセクハラやじを書き続けてきたゴーストライターしか住んでいない消滅可能性都市の絶景をバックに、こじらせ女子を卒業した輝く女性がアイス・バケツ・チャレンジを行った。それは…

悪戯短篇小説「隣は何をする人ぞ」

学校の門前に文具屋があり、競馬場の向かいに消費者金融があり、飲食店にトイレがある。世のなか合理的にできている。男が倒れたのは美容院の前だった。男の頭髪は燃えていた。パーマネントに失敗したのだ。失敗の方法は色々ある。男はとりあえず、美容院の…

電子書籍『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』発売のお知らせリターンズ

AmazonのKindleストアにて発売中の電子書籍『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』が、このたびiOS(iPhone、iPad、iPod Touch)対応になりました。もちろんKindleやAndroid携帯でも読めます。ただしスイカ割りなどの最中で目隠しをしていると読めないこと…

電子書籍『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』発売のお知らせ

当ブログに掲載していた悪戯な短篇小説らをこのたび一斉召集し、電子書籍化しました。プロの絵師にわざわざ発注した表紙画をはじめ、著者あとがき・解説(講談社文芸文庫並みの長文)・レーベル名(虚実空転文庫)・ロゴマーク(髭の奴)、挿絵(耳毛の奴)…

悪戯短篇小説「新語流行語全部入り小説2013」

富士山の八合目に美文字レベルの大の字をクッキリと浮かび上がらせるPM2・5の靄を突き抜けるように、困り顔メイク兼涙袋メイクで読モを気取ったNSC出身のこじらせ女子と、あまロスに悩むさとり世代の日傘男子が弾丸登山を試みた。これは実のところ、「頂上に…

悪戯短篇小説「ガンズ安堵おばはん」

街角のおばはんブティックで拳銃がクロスしたデザインの凶暴なセーターを売っていた。黒地に金のラメで胸元に拳銃があしらってある。ガンズ・アンド・ローゼズのTシャツで見たことのある構図だがこちらの方がむしろ凶暴だ。なぜならばガンズのTシャツは銃が…

悪戯短篇小説「違いがわからない男」

「ちょっとすいません」 「ちょっとじゃないだろう! だいぶすまないと思ってくれなくちゃあ」 「あ、すいません。でも正直、そこまですまないとは思ってないわけですよ」 「そんな中途半端な気持ちで初対面の人に声を掛けるなんて無礼だねキミは。急いでる…

悪戯短篇小説「史上最強の失業者」

祖父母の命令で鬼を殲滅したら次の日から失業した。鬼を全滅させたら鬼退治の仕事がなくなるということに、最後の一匹を倒している途中で気づいたが犬、猿、キジの手前もう後戻りはできなかった。自らの活躍が失業の危機を呼び寄せていることに気づかなかっ…

悪戯短篇小説「世界に一つだけの花を見つける世界に一つだけの方法」

私は世界に一つだけの花をついに発見した。世界に一つだけの花は、世界に一つだけの村にある世界に一つだけの森の奥の世界に一つだけの沼のほとりにひっそりと咲いていた。世界に一つだけの花は、私にとって間違いなく世界に一つだけの花だったが、皆にとっ…

悪戯短篇小説「使えない理由」

道ばたに佇む男がいる。男は見たところ何もしていないが何かを待っているような顔だけはしている。その手にステッキを握っているのも、なぜかしら何かを待っているような印象を通行人に与えている。だが男は本当に佇んでいる。男は何も待っていない。純粋に…

悪戯短篇小説「不向き村」

花粉症の木こりが木を伐っている。その木の枝には高所恐怖症の猿がいて、猿の目線の先に広がる海には、ビート板で泳ぐ海兵隊が大量に浮かんでいる。全員が全員、ビート板なしでは泳げないのだ。海兵隊のひとりがビート板から手を滑らせ溺れかけると、これま…

夢一夜 スーパージェッターせいじ

運動会当日、校庭には巨大なトレーラーが持ち込まれた。タイヤがいっぱいついている。この日を楽しみにしていたどころか、僕は普通の体育の授業だと思っていたらしく、校庭の周囲にぐるりと並べられた椅子で靴ひもをむすびながら、とにかく困惑していた。困…

悪戯短篇小説「ランドリー・マン」

油谷は蝉の抜け殻を集めていた。今では洋服ダンスの5段すべて、蝉の抜け殻で埋め尽くされている。抽出をあけるたびにキュッキュと鳴くのは、もちろん蝉の仕業ではなくタンスが古いせいだ。あくまでも抜け殻であり、油谷は蝉本体に興味はない。当初は、ストリ…

悪戯短篇小説「元祖エビサーの誕生」

「これ以上は限界かもしれないな。もうマスプロだ」 ヨシカズはショーウィンドウに映った自らの後ろ姿を振り返り、そう呟いたのだった。マスプロとはもちろん、「見えすぎちゃって困る」の意である。 ヨシカズは数年前、ローライズブームが襲来した際に、仲…

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