泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

短篇小説

「新語流行語全部入り小説2016」

歩きスマホでポケモンGOをしながら都内のあちこちへ片手間に火を噴きまくるジカ熱のシン・ゴジラを、もはや民泊中のアモーレたちが築いた愛の盛り土だけで防ぐことは不可能だった。しかも、その盛り土すら実際には行われていなかったという事実が発覚したと…

短篇小説「頭痛が痛い田村」

頭痛が痛い田村は腹痛も痛くなってきたような気がしているが腹痛は痛くない。膝痛が痛いのはいつの間にか治って完治していたし、歯痛が痛いのも半年前に治療して治したばかりだからこの問題は問題ない。虫歯が蝕まれていたのだ。ただし寒さが寒い季節には、…

短篇小説「スプーン女子」

「スプーンおばさん」こと丸坂匙代は、一切の優柔不断を許さない性格に生まれた。おそらくそれは、スプーンという「片面(=凹面)しか使用しない道具」を携えてこの世に生を受けてしまったからだろう。右手に持って生まれたものがスプーンではなく箸であっ…

短篇小説「犯罪動機One & Only~それでもボクはやってます~」

刑事「お前がやったんだな。で、動機は?」 犯人「はい、ついカッとなって」 刑事「ありがちだな。工夫がない」 犯人「えっ、没とかあるんすか? 動機なのに?」 刑事「当たり前だ。没のない社会があるか。誰だって上司や取引先に没を出されて、それでもやり…

短篇小説「おとぼけフランス人シラーヌ・ゾンゼーヌ」

「ハテ、ナンノコトデスカナ?」ホームセンターから一歩出たところを取り押さえられたフランス人シラーヌ・ゾンゼーヌは、ロングコートのポケットをパンパンに膨らませながら、腕を掴んできた万引きGメンの女・東海林メアリーにそう言い放ったのだった。ちな…

短篇小説「歩くATM~手間亮という男~」

手間亮という男はすこぶるいい奴だが、一緒にいるといつの間にかお金が減っているので注意が必要だ。彼は仲間内で「歩くATM」もしくは「生けるプレイガイド」と呼ばれている。ある日僕は手間亮と映画に行く約束をした。うちから徒歩5分のマンションにある彼…

短篇小説「うろおぼ刑事」

今まさに、うろおぼ刑事が万事うろおぼえなまま現場へ突入しようとしている。懇意にしている情報屋から、「海沿いの第三倉庫でこのあと麻薬取引が行われる」という情報を聞きつけたような気がしないでもないからである。第二倉庫だったかもしれないし、街道…

短篇小説「言うだけ刑事」

「おい、待て! さもないと撃つぞ!」言うだけ刑事が、今日も威勢よく声を張り上げる。しかしそこはもちろん言うだけ刑事。ただ単にそう言っているというだけの話で、拳銃を抜く素振りもなければ、追いかけることすらしない。公園のベンチで悠然とカップラー…

短篇小説「何も言えなかった…夏」

今年も冬彦の夏は、何も言えないうちに終わってしまったのだった。大学のサークル仲間と繰り広げたBBQ…口に放り込んだ安い肉をいっこうに噛み切れぬまま、何も言えず終わった。高校時代の友人としこたま買い込んで楽しんだ花火…口にくわえたロケット花火が不…

悪戯短篇小説「タテ割り刑事」

張り込み刑事が今日も現場に張り込んでいる。張り込み刑事は文字どおりの張り込み刑事であるから、張り込む以外の仕事は何もしないし教わってもいない。手錠の掛けかたすら知らないし、そもそもそんなもの所持してもいない。銃なんてもってのほかだ。それぞ…

悪戯短篇小説「注文の多い料理店にいる記憶力の悪いウェイトレス」

休日の朝、のっそりと起き出して「中身の乏しい冷蔵庫」を確認した「思い込みの激しい悦郎」は、とりあえず遅めの朝食をとるため、駅の向こうにある「注文の多い料理店」の「シェフの気まぐれが激しいランチ」をいただきに向かうことにした。しかしいざ「遮…

悪戯短篇小説「賃走少年」

拓朗は少年で、少年は拓朗だった。テレビのニュースを観て犯罪に憧れた拓朗少年は、家の前でアイドリング中の見知らぬ車の助手席に乗り込むと、運転手にナイフを突きつけて言った。「おい、東京駅まで行け! 言う通りにしろ!」不意の乗客に運転手は、思いの…

悪戯短篇小説「損失の多い挑戦者」

今日は久しぶりに、小銭拾い放題の店に行った。もちろん、自分で落とした銭を自分で拾うのである。デニムのポケットから革財布を取り出し、半径1メートルあたりに小銭をそっとばら撒いていると、横からサッと手が差し出され、落としたての百円玉をかっさらっ…

短篇小説「河童の一日 其ノ九」

まもなく夏休みが終わる。僕は河童だけど人間の学校に通っているので、夏休みもあれば宿題もある。こんなに宿題があるなら夏休みなんていらない。というのはもちろん嘘で、むしろ人一倍(じゃなくて河童一倍?)この夏休みを「夏休んだ」覚えはある。オリン…

偉大なる司会者くん

日本人選手が多くのメダルを獲得したリオ五輪レスリング競技の影響を受け、人気クイズ番組『世界ふしぎ発見!』でも、マスコット人形を投げ入れる「チャレンジ」制度が導入されることになった。投げ入れられるのはもちろん、偉大なる司会者の偶像としての「…

捨てる神に拾う神、その他の神も様々にあり

「捨てる神あれば拾う神あり」とことわざにあるが、むろん両者の数が同じであるとは限らない。事実、近年は「拾う神」の減少(少神化)が叫ばれている。捨てて身軽になる神ばかり多くて、「拾う神」はいつも両手いっぱいに人間を抱えて歩いている。これでは…

悪戯短篇小説「出かけない三郎」

三郎はとにかく出かけない。一郎と二郎はむしろ頻繁に出かけるほうだが三郎はわざわざ出かけたりしない。晴れの日も出かけないが雨の日はさらに出かけない。雪の日に出かけるのは、特に雪が好きだからではなく、三郎が「俺は晴れの日も、雨の日も、曇りの日…

短篇小説「河童の一日 其ノ八」

夏が来た。河童だって流れるプールが好きだ。今日は茨城から泳いできた爺ちゃんと、遊園地のプールへ行った。遊園地へ行くと必ず子供たちが寄ってくるけど、握手をしてあげると皆あっさり引き下がってくれるので問題はない。手が思いのほかビチョビチョだか…

「動詞君ノンストップ」

駅前の喫茶店内であばれる君があばれ出したとき、勇敢にも彼を止めにかかったのは店長のふられる君ではなく常連客のつよがる君だった。ふられる君は昨日雇ったウエイトレスにたったいま厨房でふられたばかりで、それどころではなかったのだ。とはいえ、特に…

「揺れながら落ちる寿司」

「回転寿司は、どうして回っているの?」街道沿いにある全国チェーンの回転寿司店内に、男の子の素朴な疑問が響きわたった。タッチパネルで注文するタイプの大型店であるため握り手の姿は遥か遠く、その問いかけは届くはずもない。少年の左隣に座っている母…

悪戯短篇小説「オノノミクスの神対応」

雪の予報を裏切って晴れ渡った真冬の午後、大学の神サークルの先輩に、川沿いの喫茶店へと呼び出された。割のいいバイトがあるという。先日新しい十字架のシルバーアクセを買ったばかりで、ちょうど今月ピンチだったので二つ返事で赴いた。 電子音により威厳…

悪戯短篇小説「桃太郎謝罪会見」

まさか鬼のツノからきびだんごが出てくるとは。 桃太郎はだだっ広い『ホテルニュー鬼ヶ島』の謝罪会見場で大量のフラッシュを一身に浴びながら、鬼の知能を高く見積もりすぎていたことを激しく後悔していた。あれがそこから出てくるのは必然であることに今さ…

人類を滅ぼすお掃除のテーマ、そして完璧な人間の逆襲

百貨店のフロアを歩いていると、映画『ゴーストバスターズ』のテーマ曲が軽快に流れていることにふと気がついた。どこかに霊がいるのだろう。 あるいはウインドウショッピング・オンリーの客、つまり何も買わない賑やかしの客を「ゴースト」と名づけ、それら…

短篇小説「河童の一日 其ノ七」

近ごろ甲羅のフィット感が悪いので、調整してもらうため久々にスポーツ用品店へ行った。そもそも僕は、甲羅のフィット感なんて気にするタイプの河童ではなかった。しかし以前、グローブ用オイルを買いにスポーツ用品店を訪れた際、「おい坊主、プロテクター…

曲名小説「ロマンスのゆくえ」

ありあまった「ロマンス」は、広瀬香美のところに持っていくと無料で引き取ってもらえるらしい。そうやってありあまった「ロマンス」を集めて練り込み陽のあたらない場所で数年寝かせると、熟成して「ロマンスの神様」になるという。一方、「ロマンティック…

短篇小説「河童の一日 其ノ六〜河童 vs 家電量販店〜」

河童だって音楽が好きだ。文字どおり、音を楽しんでいる。といっても、川のせせらぎとか鈴虫の鳴き声とかじゃなくて、普通に人間の好む音楽を河童も聴く。エミネムとか。NO MUSIC,NO KAPPA LIFE.ただしイヤホンがすぐ駄目になるので困る。河童は年がら年中濡…

短篇小説「河童の一日 其ノ五」

今日は八百屋のおっさんにきゅうりで殴られた。売りもので殴るなんてどうかしてる。ちなみに二刀流だった。しかもきゅうりが僕の大好物だってことを、八百屋のおっさんはもちろん知っている。となると、「わざわざ相手の好物を用いて殴る」という行為は、果…

新語流行語全部入り小説2015

秘技アゴクイと切れ目のない対応で結果にコミットする上級国民のプロ彼女と、風呂上がりに全裸で腰を屈めた五郎丸ポーズで「安心して下さい、穿いてますよ。」と言いつつ毎度穿いてない、というルーティンを繰り返す自称ミニマリストの下級老人との恋愛関係…

悪戯短篇小説「ウーピー対ゴールドバーグ」

賛成派の筆頭がウーピーで、反対派の筆頭がゴールドバーグだった。もはや何について賛成し反対しているのかは、誰にもわからなかった。とりあえずウーピーはコーヒーを、ゴールドバーグは野菜ジュースを飲んでいる。ゴールドバーグがストローを加えた隙に、…

悪戯短篇小説「恋は瀕死」

健壱は桜子のことが死ぬほど好きだったが桜子は健壱のことが死ぬほど嫌いだった。それは健壱が桜子に、「君のことが死ぬほど好きだ」と決死の覚悟で告白したからだ。その言葉を聴いた桜子は、本当に「死ぬほど好き」ならばいっそ死んでくれ、と声を殺して呟…

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